日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
コロンビアで大量のフカヒレ押収!脅かされる生物多様性
9月27日、コロンビアの首都ボゴタのエルドラド空港にて3,493点ものフカヒレが入った複数の箱が押収されたとして日本でもニュースになりました。
この荷物は魚の浮袋として申告されていましたが、運送業者が中身を確認したところフカヒレが発見され、申告と違う他の種類の魚のヒレが入っていると警察に通報したことからこの出来事が発覚したとのことです。
このフカヒレはバジェデルカウカ県のロルダニージョからボゴタの空港に陸路で輸送され、その後香港に密輸されるところでした。
ボゴタの環境事務局のカロリーナ・ウルティア氏は、フカヒレのサンプルを採取しどの種類のサメから取られたフカヒレなのかを調査すると発表していますが、コロンビアに生息する76種類のサメのうちオナガザメやクロトガリザメの様な絶滅危惧種であるサメのヒレも今回押収されたフカヒレに含まれている可能性が高いとされています。
医師であり環境活動家でもあるカミロ・プリエト氏は、空港に辿り着くまでにいくつもの組織が運搬を援助しており、密輸を実現するためのしっかりとしたネットワークが存在していると指摘しました。
Inaudito. En el aeropuerto El Dorado @Ambientebogota incautó 3493 aletas de tiburón y 117 kilos de vejigas natatorias de pez que iban a ser enviadas a Hong Kong. Entre 900 y 1000 tiburones fueron sacrificados. Total rechazo a estas conductas que afectan la fauna de nuestro país. pic.twitter.com/ZaKX9wDWFd
-- Carolina Urrutia Vásquez (@colinita) September 24, 2021
コロンビアでは生物多様性保護のために2020年11月にサメの漁を禁止する法律が制定されましたが、フカヒレは海外では高値で売れることからこういった密輸は残念ながら今でも行われています。
またサメの漁が全面的には違法とされていない隣国エクアドルでは、9年間でフカヒレの輸出が635%も増加しているとのことで、サメの多様性が脅かされている一方でフカヒレの需要が依然として高いことが伺えます。
生物多様性を守れ!
コロンビアはブラジルに次いで世界で2番目に生物の多様性が豊かな国です。しかし、同時に海面や気温の上昇など気候変動の影響を受ける脅威にさらされている20の国の一つでもあります。
エキゾチックで珍しい動物たくさん生息しているが故に多くの動物がペットとして違法に売買されている上に、それらの動物が生きていくために必要な森林は違法に次々と伐採され続けており、コロンビアが誇る生物の多様性が年々脅かされているのが現状です。
それを受けてコロンビアのイヴァン・ドゥケ大統領は今年7月29日に環境犯罪を取り締まる法律であるLey de Delitos Ambientalesを制定しました。この法律で新しく6つの環境犯罪を罰し、既存の5つの罰則の強化するということです。
Nuestra política ambiental avanza y desde el Parque Serranía de Chiribiquete, destacamos la Ley contra delitos ambientales y anunciamos que en septiembre lanzaremos la política pública y el documento CONPES de áreas protegidas, para preservar 31 millones de hectáreas, en el país. pic.twitter.com/YdYLZhm34x
-- Iván Duque @IvanDuque) July 9, 2021
この法律で定められた新しい6つの罰則は以下の通りです。
− 生物の密売は懲役5年〜11年及び罰金
− 森林伐採は懲役5年〜12年及び罰金
− 森林破壊の促進と資金提供は懲役8〜15年及び罰金
− 環境において重要なエリアへの侵入に資金提供は懲役8年〜15年及び罰金
− 国が保有している未開拓の土地の私有地化は懲役6年〜12年及び罰金
− 国が保有している未開拓の土地の私有化に対する資金提供は懲役8年〜15年及び罰金
また、自然破壊や違法な狩りや漁に対しては罰則を厳罰化するとのことです。
この新しい法律を発表する際に、ドゥケ大統領は「この様な一体化したアクションを起こさない限り、我々がやること・宣言することは全て取り返しのつかない悲劇に対する単なる時間稼ぎにすぎないだろう。このメッセージは外交議論や会議室で議論されるものではなく、我々は既に思い切った行動をするための歴史的に極めて重要な瞬間に直面しているのだ。」とコメントをしています。
この法律が成立して数ヶ月が経った今月3日、コルドバ県にて11匹のアカアシガメをSNSで密売していたとして一人の男が野生生物密売の罪で起訴されました。
アカアシガメは中南米に生息する陸ガメで、日本でも2万円ほどで販売されている亀です。絶滅危惧種ではありませんが、近年違法な狩りや森林伐採によって住処を失い減少傾向にある亀とも言われています。
Los hechos están relacionados con una alerta que recibieron las autoridades sobre el traslado de tortugas de Montería (Córdoba) a Bogotá, con el fin de venderlas → https://t.co/sFUosEcy3N
-- W Radio Colombia (@WRadioColombia) October 3, 2021
また、同じ時期に首都ボゴタで絶滅危惧種であるハリネズミを売ろうとした男がアントニオナリーニョの市場で起訴されました。
コロンビアにおける野生動物の密売は麻薬、武器に次いで違法に取引されているカテゴリーだと言われています。海外で高く売れるとなるとお金に目がくらんだ人々が飛びついてしまいがちですが、こういった法律で厳しく取り締まることによってコロンビアの美しい自然と野生生物の命を守ることは非常に重要なことであると考えています。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon