日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
ロックダウン完全解除を決めたコロンビア 吉と出るか凶と出るか
コロンビアでのコロナウイルス感染状況はこれまでにないほど深刻になってきました。
コロナウイルスの第三波の真っ只中に各地で大規模なデモが始まり、そのデモはいまだに収束していません。デモが始まった4月28日から2〜3週間後に感染者はさらに増加し、6月10日には1日のコロナウイルスによる死者数が573人と過去最高を記録してしまいました。1日の新規感染者数が3万人を超える日も珍しくなく、デモの影響を否定する事はできないでしょう。
都心部の集中治療室の使用率も100%に近い状態が続き、コロナウイルス感染者とデモによる負傷者で病院は大忙し。先日、身内が交通事故に遭い集中治療室が必要でしたがベッドに空きがなく、容態が落ち着くまで手術室で待機させられたそうです。他にも予定していた手術が延期させられたという話も度々耳にするので、今はコロナウイルスでなくても病気や怪我には気をつけたほうがよさそうです。
#ReporteCOVID19 10 de junio:
-- MinSaludCol (@MinSaludCol) June 10, 2021
23.490 recuperados
29.302 nuevos casos
573 fallecidos
Muestras: 112.556
PCR: 53.176
Antígeno: 59.380
Total:
3.409.076 recuperados
3.665.137 casos
94.046 fallecidos
17.912.045 muestras procesadas
150.575 casos activoshttps://t.co/SiKTpTCQ3W pic.twitter.com/BIz3Lmr3xh
ワクチン接種状況
コロンビアでは3月中旬にワクチン接種が始まり、今は50代以上の人が接種の対象となっています。
コロンビアでのワクチンを一回接種した割合は人口の17%。日本は13%程なのでコロンビアの方が接種が進んでいるように見えますが、接種回数を見てみると日本が2140万回なのに対しコロンビアは1220万回との事なので、日本のワクチン接種のスピードの速さが見て取れますね。
日本ではアメリカへの「コロナワクチンツアー」があると聞きましたが、コロンビアでもお金持ちは順番を待たずにアメリカにワクチンを接種しにいっているようです。
先が見えない規制の連続に国民は我慢の限界
パンデミックが始まって以来、コロンビアでは規制の連続でした。
「20時以降お酒禁止」「週末外出禁止」「散歩は1時間以内」など、制限だらけの毎日。金曜日の朝に「今日の夜から月曜まで外出禁止。破ったら罰金。」と、急に規制が発表されるなどして、特に小売や飲食の仕事に就いている人は臨機応変な対応を求められ振り回されることが多かったと思います。
外出禁止令や営業停止が続いた結果、若者と女性を中心に失業者が急増し、元々大きかった貧富の差も更に大きく開きました。しかしこれだけ規制が続いているのにも関わらず感染者の数は一向に減ることがなく、『このまま家に居ては感染しなくても餓死してしまう』と追い詰められた国民が大勢いるのです。
今行われている大規模デモの参加者の中には、このように現状に不満を感じて参加している人もたくさんいる事でしょう。長引くパンデミックで国の経済状況も悪化の一途を辿り、規制をしているにもかかわらず感染者数は右肩上がり。この厳しい状況を受けてコロンビアは思い切った決断を下しました。
経済・雇用の回復 > 感染防止
6月10日、労働組合評議会は『経済復興委員会』を設立することを発表し、パンデミックとデモの影響で傷んだ経済と雇用状況を回復させるために動きはじめました。
首都ボゴタをはじめ失業率が深刻化している都心部では、6月8日から今まで行っていた外出規制を全て取っ払い、経済と雇用の回復に力をいれることを決定。また健康省からは、集中治療室の使用率が85%を下回る地域では収容人数を制限すれば大きなイベントやクラブの営業再開を許可するとの発表があり、更にはコロンビア入国の際のPCR検査陰性証明の提示も不要になるという事です。マスク着用やソーシャルディスタンスなどの基本的な感染対策は継続して呼びかけるものの、これらの規制解除は経済と雇用回復に向けての大きな一歩となるでしょう。
ただ、隣国ブラジルから入ってきた変異株の影響で若者や子供の感染者が重篤化するケースも最近では多く聞かれるため、これらの規制解除とともにワクチン接種のスピードを速める事も、このパンデミックを乗り越えるための重要な要素となるのは明らかです。
ワクチンによる集団免疫獲得と経済回復を並行して行うというリスキーな試みではありますが、ウイルス感染者数も経済も悪化する一方のコロンビアにとってはこれが最後の手段と言えるのかもしれません。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon