日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
メデジンの誇りであるメトロの進化が止まらない
コロンビア第二の都市であるメデジンには、コロンビア唯一であるメトロが走っています。
首都であるボゴタにも電車が走っていないことから、このメトロは地元の人たちにとって誇りであり自慢なのです。
「メトロ」といっても、ここのメトロは地下鉄ではなく、2路線の鉄道と6路線のメトロカブレ(ゴンドラ)、1路線の路面電車でなり立っており、通勤や通学など人々の生活に欠かせない存在となっています。
今年の11月に開設25周年を迎えたメデジンメトロですが、これから更にどんどん進化していく様です。
メデジンメトロ基本情報
コロンビア初で唯一のメトロの建設は1985年4月に開始され、1995年11月30日に運転が開始されました。
少しずつ進化を続け、今では総延長距離は47kmを超え、毎日81万人もの人が鉄道を利用しているそうです。たくさんの人が通勤や通学に利用するため、ラッシュアワーの混雑は東京並み。メデジンの人に東京のすし詰め状態の電車の動画も見せても全く驚きません。
メトロカブレが開通されたのは2004年のことなのですが、開通にはある裏話があります。
メデジンの地形は盆地のため、周りが山に覆われておりその山にはへばりつくように住宅街が広がっています。凄まじい勢いで発展を続けてきたメデジンですが、平地の地域だけが発展していき、元々貧しい地域である山の斜面に住んでいる人たちとの貧富の差が更に広がっていきました。貧しい地域の犯罪率は上がり、コロンビアの中で最も治安が悪い地域の一つとなってしまいましたが、当時の政府が電車を走らせる事のできない山の斜面にゴンドラを繋ぐことを決定。貧しい地域の人々が街まで働きにくることができるようになり、治安と貧困問題を改善させたと言われています。
多くのメデジンの住民の生活を豊かにし、発展のシンボルとなったメトロはみんなに大切にされており、街はグラフィティで溢れていても誰も電車に落書きしたりはしません。駅には警察や軍隊が常駐しており、飲酒したら乗る事ができないので日本のように金曜日の終電間近の電車内がカオスになることもないんですよ。
デジタル化が進むメデジン
現在、電車に乗るには窓口で都度切符を購入する方法と、Civicaと呼ばれる日本のsuicaの様なICカードを改札にかざす方法の二通りあります。
しかしメデジンには自動発券機がなく一駅に最大で2つしか窓口がないため、切符の購入やカードのチャージには毎回列に並ぶ必要があり、なかなか億劫でした。
そんな中メデジンのダニエル・キンテロ市長が先週、Civica payと呼ばれる新たなシステムの導入を発表しました。
Civica payはアプリケーションをダウンロードし、携帯画面に表示されるQRコードを改札に設置された機械に読み取らせて運賃を支払うシステムになるようです。オフラインでも使用可能で、メトロに限らずカフェや洋服などの日用品の買い物にも対応できるようにするということです。
導入は来年2021年の2月を予定しており、初年度で200万人の利用者を目指しています。
環境に配慮した新たな路線の開通
メデジンは今、更に新しいプロジェクトに取りかかっています。それはMetro de la 80と呼ばれる新しい路面電車の路線の開通です。
路線の長さは13,5km(17駅)で、メデジンの西部の32地域を結ぶルートになっています。
車両は電気機関車と発表されており、年間のCO2排出量を480トンも抑える事ができるとのこと。
このプロジェクトは国内外に注目を集めているようで、既に160の企業や中国、スペイン、日本、インド、トルコなどの国から専門家が集まってきているそうです。建設には6000人の雇用が見込まれるとのことで、パンデミックで失業した人への雇用に一役買いそうです。
Metro de la 80が走るメデジン西部は住宅街が多く、たくさんの人が大渋滞の中自動車を利用したりバスを乗り継いで通勤通学しています。このところ自動車の排気ガスによる空気汚染問題が深刻化していますが、多くの人がこの電車を利用する事で空気汚染と通勤ラッシュの大渋滞問題の緩和に役立つ事が期待されます。
2030年までに温室効果ガスの排出量を51%削減すると宣言したコロンビア。この路線の導入で、メデジンがエコのモデルタウンとして国を引っ張っていくことになるかもしれません。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon