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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

インドから来た100歳の妹

そうするうちにNは体調を崩して病院通いが増え、ヘルパーさんが毎日訪れるようになった。1年前に部屋で転んだのをきっかけに病院から施設に移ったけれど、連絡を取ったご家族が乗り気ではなくて、面会に行かないままになってしまった。何度か書いた手紙は読んでもらえたかしら。

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モスクの床に敷かれたカーペットの色鮮やかだったこと! この窓のような模様の上にひとりずつ座っていた。筆者撮影

イスラム教の葬儀に参列するのは初めてだった。最寄り駅からタクシーに乗って郊外のモスクに到着すると、モスリムと思われるドライバーさんは「料金はいらないよ」と言った。そんなのダメダメと交渉したけれど、「モスクに行く人からは金を取らないと決めている」と譲ってくれず、最後にはお言葉に甘えることになった。「この辺りはイスラム教徒が多いから、そういうこと、たまにあるんですよ」と、後で葬儀屋さんが教えてくれた。

モスクでは女性専用の入り口から靴を脱いで入り、持参した黒いスカーフを頭に被った。カーペットを敷いた床に座っていると、男性の部屋からマイクを通じてエキゾチックな響きのお祈りが聞こえてきた。時々ささやき声になるのが催眠術のようだった。

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広大な墓地から見上げた空は森そのもの。近くにあったNのご主人のお墓には、さすが政府高官、ひときわ大きな長方形の墓石が置かれていた。筆者撮影

その後15分ほど離れた墓地で埋葬があり、棺が土の中に埋められるところに立ち会った。これも初めてのことだ。英国最大規模という墓地は緑が深く、まるで森の中にいるようだった。

さまざまな宗教の施設があり、著名人の墓も多いそうで、フレンドリーな葬儀屋さんが、「あの辺はゾロアスター教のエリアです。特定できないようになってるけど、フレディ・マーキュリーの墓もあるんですよ」と教えてくれた。

その瞬間、目を輝かせたNが、「ちょっとちょっと、わたしの近くにフレディ・マーキュリーがいるのよ。今度見にいらっしゃいよ。派手な格好してるわよ!」とくすくす笑う姿が目に浮かんだ。そうそう、意外にミーハーだったよね。

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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