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ラッシャー貴子|イギリス

国宝級のくまの大冒険、最新映画「パディントン・イン・ペルー」(原題)

最初にわたしが気になったのは、映画公開前にSNSで流れてきた動画だった。ロンドンを代表する観光地の3か所に、マーマレードがたっぷり塗られていてびっくり。よく見ると、ジェル状のマーマレードはゆっくり下に垂れてきていてリアルだ。どうやって撮ったの、これ!

パディントンの公式インスタグラムアカウントの投稿より、タワーブリッジにたっぷり塗られたマーマレード。どうやって撮ったのか、誰か教えて!

わたしが驚いたほど世間の話題にのぼらならなかったので、もしかしたら今の時代、映像を合成したものかもしれない。けれども、セントポール大聖堂につながるミレニアム・ブリッジを歩く人たちは、マーマレードの塊を避けるように歩いている。やっぱりその場に何かあったんじゃないの? この目で見てみたくて、投稿を見た日の午後に家を飛び出したけれど、マーマレードはもうパディントンが舐めてしまった後だった。残念。そのからくりはインターネットで検索したくらいではわからず、そうなるとますます気になる。

他にもこの映画の宣伝は、ブラウン氏を演じたヒュー・ボネヴィルがロンドンの名所でマーマレード・トースティ(サンドイッチをトーストしたもの)を売ったりパディントンの絵が描かれた列車が定期運行になったり映画撮影に使ったブラウン家の家具を置いた家に抽選で無料宿泊できることが発表されたりと、ファンにはたまらない、スケールの大きなものが多かった。新しい広告が目に入るたび、わたしは嬉しくなってGo! Go! パディントン! と心で叫んだ。

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この映画の宣伝は派手なものも多かったけれど、映画の基本であるバスの車体や駅構内のポスターなども抜かりなくおさえていた。だからどこに行ってもパディントンの姿に出会うのだった。筆者撮影

さすがファミリー映画、大人も子どもも笑って、温かい気分になって終わる。今回はお決まりのロンドン観光はお預けだけれど、代わりにパディントンの故郷、「あんこくのペルー」をのぞくことができる。わたしが子どもの頃に憧れた土地だ。危険の多いアマゾンの大自然の中で、心配性のブラウン氏はさて、どんな行動に出るでしょうか!

映画版は毎回のゲストも豪華で、これまでニコール・キッドマンやヒュー・グラントが「悪役」を演じてきた。本作のゲストは、あまり見たことのないコミカルな演技が光るアントニオ・バンデラスと、今や英国を代表する女優のひとり、オリヴィア・コールマン。特にコールマンはいつもの奇妙な魅力全開で、これも大人が楽しめるポイントと言えそうだ。

「パディントン・イン・ペルー」は、日本やアメリカでは2025年1月に劇場公開予定。英国の人たちは意外にせっかちで、本編が終わるとすぐに席を立って暗がりの中を帰り始めるのだけど、この映画はぜひ最後の最後まで見てほしい。ニヤリとすること間違いなしだ。

newsweekjp_20241119122336.jpegパディントン駅に置かれた銅像。ずっと前からあるけれど何度か場所が移動して、今はちょうど映画「パディントン」でブラウン一家に出会ったあたりの場所に置かれている。たまにマーマレードの瓶が「供えて」あるのを見かけて嬉しくなる。(筆者撮影)
 

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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