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ラッシャー貴子|イギリス

国宝級のくまの大冒険、最新映画「パディントン・イン・ペルー」(原題)

今や世界中で愛されるパディントンだけれど、特に国内での人気がここまで不動のものになったのは、故エリザベス女王の即位70周年記念からではないだろうか。女王に招かれて二人きりでお茶をした、あの話題の動画が作られた時だ。

ロイヤルファミリーの公式YouTubeカウントより、故エリザベス女王の即位70周年記念に作られた動画。パディントンの原作シリーズにならって、タイトルは、「パディントン、女王に会う(Paddington Meets the Queen)」。この動画は、翌年の英国アカデミー賞テレビ部門「記憶に残る」賞を獲得した。

紳士的なパディントンにもときどきくまの顔が現れて、「お行儀が悪い」事態になる。そんなパディントンをおおらかに見守る女王は、茶目っ気もたっぷりだ。この即位70周年では、(当時)96歳になっても公務を続ける女王への感謝と長寿のお祝い、それからかわいいおばあちゃんと認識された女王への愛に溢れていたので、そのおめでたムードが動画とぴったりマッチした。最後に(もちろん帽子を脱いで)女王にお祝いを述べたパディントンは、国民を代表していたと言っても過言ではない。

女王は、その3か月後に亡くなった。献花が置かれた公園には、花とともにたくさんのパディントンのぬいぐるみが集まった。葬儀前日には映画「パディントン」が、当日には「パディントン2」が公共放送BBCで放映されたことも、ますますふたりを深く結びつけた。放映前には「パディントンが女王にお会いした時間を思い出しつつ」という文章とともに、このお茶会の動画も流された。気の重い、長い長い葬儀中継の後で、微笑む女王と無邪気に話すパディントンの姿を眺めて、わたしたちの心がどれほど慰められたことか。このタイミングでパディントンを連れてきたBBC、グッジョブ!

あまりの人気ぶりにパディントンを「国宝」と呼ぶメディアさえあって、さすがに大げさでは? と思っていたけれど、今回の映画公開前に、パディントンに本物の英国パスポートが発行されたと聞いてのけぞった。この愛すべきくまは、人間の移民には口やかましい内務省からも特別扱いを受けているのだ(そのパスポート、ぜひ見てみたい!)。

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偶然通りかかったパディントンの壁画。映画の設定にちなんでペルーのアーティストが描いていて、明るくカラフル。嬉しそうに記念写真する人が絶えなかったので、順番待ちは諦めた。夜だったせいか、並んでいたのは大人ばかり(筆者撮影)

新作映画の公開に先立つ広告も、国宝級の名に恥じない大がかりで立派なものだった。ふだんから町のあちこちでパディントンの姿を見慣れているせいか、パディントンの像が増えたり大きな壁画が描かれたりしたくらいでは映画のプロモーションだと気づかれないのかもしれない。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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