England Swings!
天皇陛下も暮らした伝統の町オックスフォードと学生たち
先日、これという目的もなくオックスフォードに4泊してきた。大学の世界ランキングで1位を誇るオックスフォード大学のある町だ。前に2度ほど行ったけれど、もうだいぶ前のことですっかり記憶が薄れたので、もう一度ぶらぶら歩いてみたくなったのだ。
オックスフォード大学は英語圏で最古の大学と言われている。あまりに古過ぎてはっきりしないらしいけれど、11世紀の終わりには学生がいたという史料があるそうだ。町には中世の趣を感じさせる建築物もずいぶん残っていて、圧倒されるほど大きくて威厳あるものも多い。そういう建物に囲まれて古い丸石が敷かれた小道を歩いていると、あっという間に過去にタイムスリップすることができる。
オックスフォード大学は総合大学で、現在44ある「コレッジ」の集合体だ。つまり学生は直接にはコレッジに所属するのであって、「オックスフォード大学」という大学があるわけではない。基本的にコレッジ内の寮に住むことになる学生たちは、食事や生活をともにしながら学業以外の素養も育んでいく(コレッジの他に「学科」という概念もあるけれど、複雑になるのでここでは触れないことにする)。
オックスフォードはほとんどどこでも歩いて行けるこぢんまりした町だ。その町のあちこちにコレッジが散らばっているせいか、世界中から集まった優秀な学生たちは町じゅうをキャンパスにして歩き回っている。こんなに大勢の学生をいっぺんに見られる町はそうないだろう。その彼らの合間をぬうように、やはり世界中からやってきた観光客が嬉しそうに写真を撮りながら歩いている。なかなかユニークな眺めだ。
今回の滞在でいちばん印象に残ったのは、この学生たちだった。学業はハードだと聞くし、カフェでも真剣な表情でラップトップに向かっている姿をずいぶん見かけた。それでもたいていは友だちと笑いながら歩いていたり、道ばたでサンドイッチをほおばっていたり、時おり集まって歌ったり踊ったりしていて、自由で楽しそうだった。若さがまぶしい。
夜にテイクアウトの食事を袋にも入れずに持ち歩いたり、土曜には友だちと一緒にカフェで朝食を摂ったりしている彼らを見て、親元を離れて大学の町で暮らすことに憧れていた若い頃の自分を思い出した。大人として外国で暮らす今は、学生の中でも特に若い学部生や国を渡ってやってきた子たちはひとりで暮らす心細さをどう乗り越えているんだろう、とも想像してしまう。オックスフォードだけでなく、英国では大人へのステップとして、敢えて実家から遠い大学を選ぶことが多いそうだ。今のわたしからは子どものようにあどけなく見える彼らが、こうして早くから親離れしているんだと思うと、急に頼もしく見えてきた。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile