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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

奨学生限定だった1ユーロの食事が全大学生へ拡大 キラキラだけじゃないパリ

食糧配給所にできる長蛇の列 パリはキラキラだけじゃない  筆者撮影

IFOP(Institut français d'opinion publique)(フランス世論研究所)の調査によると、フランスの大学生の生活状況が悪化しており、お金の不足のために、多くの学生が食事を頻繁に、または、時々、抜くと答えており、1週間に平均 3.5食を抜かざるを得ない状況であることが明らかにされています。

これまでフランスでは、2020年の初めにCROUS(奨学生)及び、不安定な家庭向けのキャンティーンや特設配給所での1ユーロでの食事提供制度を行ってきましたが、これは、もはや奨学生だけに関わる問題ではないとし、この1ユーロの食事の提供を全学生(大学生)に拡大する社会法案を国会で議決しています。

フランスの公立校(保育園、幼稚園、小学校、高校)のキャンティーン(学校給食)の料金は、各家庭の収入ごとにその料金が10段階に設定されており、具体的には、パリ市の場合は、1食あたり、0.13ユーロから7ユーロと個別の料金体系が敷かれています。公立校のキャンティーンの食事の実費がどの程度なのかはわかりませんが、不足分に関しては、国が補填するという形をとっているのだと思います。このシステムはとても合理的だと思います。このため、高校生以下の学生に対しては、ある程度の援助がなされてきたわけで、これまでは、ちょうど、そこから漏れていた経済的に弱い環境にある大学生への援助が欠けていたことになります。大学といっても、そもそも特別な大学や学科等は除いて、フランスの大学の学費は、日本では考えられないほど安く、経済的に厳しい家庭であっても、志さえあれば、その門戸は開かれている気がしますが、入学できたからといって、しっかり勉強しなければ、進級、卒業は叶わないので、入学してみたものの、断念するか、進路を変更する人も少なくありません。

CROUS(奨学生)の1ユーロの食事

この奨学生向けの1ユーロの食事というものの存在を2020年当時から私が知っていたのは、何より、娘が奨学金を受けて、進学していたためで、娘が小学生の頃に突然、フランス人の夫が他界し、それ以来、我が家は母子家庭となり、決して家計に余裕があるわけではありませんでした。フランスの奨学金制度は、一般的には国からの援助で借金ではありませんが、当時、私は、そんな奨学金の制度なども知らず、家から通える範囲くらいだったら、なんとかなるけど、大学に行くことだけが必須だとも考えていなかったし、ましてや、娘にあまり期待しすぎて、プレッシャーを与えるのもよくないし、とにかく、何よりも「娘が健康でやさしい人になってくれれば・・、横道に逸れないでくれれば・・」くらいに思っており、娘にも「勉強が嫌いだったら、ムリして大学に行かなくてもいいよ・・でも、その場合は、フラフラしていないで働きなさい」と言っていました。

娘はきっと勉強が嫌いではなかったし、何よりも負けず嫌いで、「大学くらい行くに決まってるでしょ!」と、まじめに勉強して、奨学金制度などを自分で調べ上げ、奨学生が受けられる住宅補助などの援助金を受けながら、高校卒業後、プレパー、グランゼコールへと進んだのでした。結果、娘の学費は最低限で抑えられたおかげで、それ以外に娘が体験できることをできるだけさせてあげられるためにお金を使うことができました。本当に娘はフランスに育てていただいたといっても過言ではなく、今でも本当に感謝しています。

奨学生向けの1ユーロの食事のシステムができたのは、娘がグランゼコールに在学中のことで、それでも、食費くらいは、私が送金していたのですが、お得な情報を決して見逃さない、しっかり者の娘はこの1ユーロの食事を時々、利用していました。一応、サラダなどの前菜とメイン、果物やヨーグルトやチーズ、ムースなどのデザートまでついています。今どき、バゲット1本でさえも1ユーロでは買えない時代に、これは、とても有難いこと。学生によっては、昼食だけでなく、夕食分も調達して行く者もいるそうです。そもそも概して、一般的には、特別な機会を除いては、比較的、質素な食生活を送っているフランス人。学生といえば、なおさらのことですが、外食するとなると、ワンコインで食べられるというような場所は、ほぼほぼありません。となると、経済的に厳しい学生は食事を抜いてしまう・・などということも容易に起こってしまうのです。

フランスで育ちながら、フランス料理があまり好きではない娘は、「メニューによっては・・」という程度の利用の仕方だったようですが、娘は、半分は「1ユーロでこれだけの食事!食べなきゃ損!」くらいなところもあって、「今日は1ユーロの食事にしてみた・・」くらいな感じでしたが、食事はしっかり食べる娘、彼女が食事を抜くということは、まずありません。

貧しいのは大学生だけじゃない・・食糧配給所にできる長蛇の列

そもそも、フランスは国自体が3兆2,280億ユーロという記録的な負債を抱えている状況で、それでも、動き続けなければならない国は、なんとか、その赤字を補填しながら、国を保っていこうとしているために、政府も不安定な状況が続いています。この状況の中で経済的な不安定な層が拡大してきていることは明白で、弱い者にシワ寄せが来ていると言わざるを得ません。

それでも、今回のように調査機関の報告を拾い上げ、弱い立場の者、とりわけフランスの将来を担う若者の生活を支える支援の法案を国会ですくい上げて協議し、システムを作り上げていってくれるところは、素晴らしいな・・と思いますが、実際には、「その速度が間に合っていないのでは・・」と思うことに時々、遭遇することがあります。

私は、普段、パリで生活していても、危険なところには近寄らないし、ある程度、限られた行動範囲の中で暮らしています。それが、長年、パリで生活している自分の身を守る術でもあると思っています。決して、優雅な生活をしているわけではありませんが、ある程度、そのエリアの様子を見れば、そこにいる人々の様子などで、「ここは、大丈夫か?ヤバいか?」くらいの勘は働きます。

そもそもパリ自体、そんなに大きな街でもないので、それでも日中のパリ市内なら、気を付けてさえいれば、そこまで危険な目に遭うこともそんなにはありません。ところが、先日、「ここ!行ってみたい!」と思うパティスリーがあって、出かけた時のこと・・。そのパティスリー自体は、行ってみると、あまりにキラキラした店舗で、私は「ん~!これは違うかな・・?」と早々に退散したのですが、その道すがら、何やら、その脇道に長蛇の列があって、しかも、その様子がふつうに人気店にできるような行列とは感じが違うし、「一体、何だろう?」と思って覗いてみたところ、それは、「食糧配給所」でした。

これまで、テレビのニュースなどで、「食糧配給所に長蛇の列!」などという報道を見たことはあっても実際に遭遇したのは初めてで、ほとんどの人がキャディーや、大きな袋を持って並んでいるのです。聞くと見るとは大違いというか、そのインパクトは、かなりショッキングで、しかも、近所の人ばかりではなく、わざわざメトロに乗ってくるような人もいるようで、帰りのメトロに乗り合わせたりもしました。

あんなキラキラなパティスリーの数本逸れた道沿いに、食糧配給所があって、しかも、そこには長蛇の列。これがパリの現実なのだとあらためて思わされ、なんだか重い気持ちになりました。しかし、そこに来ている人々は、私が思うよりもずっと明るくて、もう常連の人々なのか、食糧の調達をした後は、しばらく立ち話をしたりして、「じゃあ、また来週ね!」などと言いながら、去っていくのも印象的でした。

華やかなパリ・オリンピックが行われていた時にも、自分の住んでいる街でオリンピックなんて、一生に一度あるかないかのこと!と思い、その間、ほぼほぼ、パリ市内、またその近郊のオリンピック施設は、目に収めておこうと色々と見て歩いていました。パリ中心部のコンコルド広場からチュイルリー公園にかけて、また、ベルシーのスタジアムなど、オリンピックカラーに彩られて、本当に見事に美しく飾られており、いつも警察官の数はかなり多めのパリですが、それ以上に数メートル毎に警備隊とすれ違うような異様な警戒ぶりでした。

パリ・オリンピックに際して、そのスタジアムや選手村がパリ近郊(といってもパリと隣り合わせの街)のサン・ドニにできているという話を聞いて、「えっ?よりにもよって、なんであのサン・ドニ?」と思ったのも事実。しかし、選手村に行ってみると、ここが「サン・ドニ?」と思うような変わりようで、あまりに綺麗で驚かされました。サン・ドニといえば、従来はあまり治安が良くないことで有名な場所だったのです。

しかし、このすぐ近くのオリンピックパークに行ったときのこと。この界隈は、逆の意味で、もうあまりの格差に驚かされ、「ここ!ほんとにフランス?」、「今、何時代?」と思うような空間が広がっており、いくら移民の多いフランスとはいえ、移民しかいないみたいな感じ・・。ボロボロのトラムなどが走っていて、空港から市内に入るメトロの駅がキラキラに新装されているのとは、あまりにギャップがあり過ぎて、ものすごくショックでした。

自らも移民の立場で何ですが、ほぼほぼフランス人はいないような地域で、ちょっといたたまれない空間でした。

フランスという国のイメージは、とかくキラキラな面が強調され、それは一概に悪いこととも思いませんが、このギャップの激しい世界が同時に存在しているということも、ちょっとだけ知ってほしいな・・とも思うのです。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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