パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
奇跡の5年以内の再開を果たしたパリ・ノートルダム大聖堂
2019年4月の衝撃的な火災から5年、パリ・ノートルダム大聖堂は、12月8日に一般公開を再開しました。この火災が起こったのは、当日の夕方、日が暮れかかる頃のことで、燃え上がる炎が立ちのぼる中、尖塔が火に覆われて崩れ落ちていく様子を見守る多くの近隣の人々が地面にひざまずき、ノートルダムを見つめて両手を胸の前で握り合わせて祈る姿は、今でも鮮明に覚えています。
幸いなことに、犠牲者は一人もいなかったのですが、その焼け跡は惨憺たるもので、まさに目も当てられないほどの被害でしたが、マクロン大統領は、それからまもなく、「ノートルダム大聖堂は5年以内に再開させる!」と宣言しました。しかし、大方、常日頃、一応、工期というものはあっても、無きのごとしのフランスの工事を見慣れている者としては、「ハイハイ・・5年以内ね・・」とそれを全然、現実的には受け止めていませんでした。
このノートルダム大聖堂の火災のニュースは全世界で報道され、まさにこの再建のために集まった全世界からの寄付は約8億4千万ユーロ(約1,400億円)と言われていますが、折りしも、そのすぐあとには、パンデミックのロックダウンのために、工事が完全に中断するという災難に次ぐ災難も重なって、5年以内に再開することは、絶望的と見られていた時期もありました。それでも、この5年以内の再建を決して諦めなかったマクロン大統領は、当初は「パリ・オリンピックまでには・・」と言っていたのは、断念していたものの、公言していた5年以内というギリギリの12月にはなんとしてでも、再開するという姿勢は、決して崩すことはなく、現実に、その年の12月8日には、その奇跡的な再開を果たしました。
再開したノートルダム大聖堂
そして、ノートルダムは5年間閉ざされていた扉を開き、海外からも次期アメリカ大統領のトランプ氏やウクライナのゼレンスキー大統領などの各国からの要人までを招き、盛大なセレモニーが行われました。当然、私は、その再開の当日には、当然のことながら、大変な人出が予想されていたので、近づきませんでしたが、その前日に、ちょっと様子を見てみようと出かけました。予想どおり、その警戒ぶりはすさまじく、大聖堂の正面の広場の部分は、立ち入り禁止になっており、大変な数の警察官・憲兵隊が配備されていました。その代わりと言っては何ですが、たくさんの見物客を見越してか?大聖堂を囲む周囲には、巨大スクリーンがいくつも配置され、集まった人々も大聖堂の中に入らなくとも、中の様子が中継される用意がされていました。これらの警備やスクリーンの設置などは、まさにパリオリンピックの際に行われていたことと同じで、もうパリ市もこの手の大々的なイベントには、慣れてきたな・・と感じさせるものでもありました。
そんなわけで、再開当日はもちろんのこと、しばらくは、相当な人出が予想され、ノートルダム大聖堂の方も「大聖堂内への入場に関しては、予約を強く推奨します」というアナウンスを出していたので、「まあ、今後、消えてなくなるわけじゃなし、急ぐこともないな・・」と思いつつ、やっぱり、予約取ってみようかな?と思って予約サイトを開いてみたのですが、どうにも当分の間は予約ができそうもなく、「まあ、ムリか・・」と諦めていたところ、「予約しなくても全然、入れる!」という情報が入り、世間がクリスマス休暇に入る直前のタイミングで、ダメ元で行ってみたところ、まるで並ぶことなく、なんだか拍子抜けした感じで、あっさり入れました。ただし、私のこのクリスマス休暇の前という目論見は当たっていたようで、現在は、下手をすると3時間は並ぶそうで、本当にラッキーでした。
再開当日のセレモニーの様子は私もテレビ中継で見ていたのですが、その時の印象は、正直、「なんだかやけに白くなっているな・・これじゃ、なんだか別物みたいだ・・」と思ったのですが、実際に行ってみるとそれは、テレビ中継のためのライティングのせいだったようで、実物は、そこまで白くはなくて、これまでどおり(とはいえ、かなりきれいになりました)で、なんだか、ホッとしたような気持ちになりました。
このノートルダム大聖堂の再開の直前には、文化大臣からの提案で「入場料5ユーロ」という案が出されて、物議を醸したことがありましたが、カトリック側からの強い反対もあり、結果、現状では入場は無料です。ただし、内部に設けられた「宝物展」のようなスペースのみが、有料となっています。一応、私は、そのスペースにも入ってみましたが、正直、ノートルダム大聖堂に入るだけでも充分に感動できるので、そのスペースは入ったら入ったで、「ほ~っ!」と思うものも多々ありますが、「まあ、これはどっちでもいいかな?」くらいの感じでした。
大聖堂の中は、大方は、以前のとおりの様子でしたが、この復興の足跡、全世界からの寄付への感謝、工事に携わった人々を讃える展示物などがいくつか見られることは、以前とは違う点です。
また、クリスマス前後ならではで、今だけの展示だと思いますが、「クレッシュ」と呼ばれるキリスト誕生シーンを表現した模型で馬小屋の中に赤ちゃん(イエス・キリスト)とマリア様、父ヨセフ、牛、ロバ、羊飼いなどがいる模型のようなものが飾られており、これは、クリスマスシーズンにおいては、かなり一般的なものではありながら、これが「さすがノートルダム!」と思うほどのなかなか見事な見応えのあるクレッシュでした。
正直、ここまでのクレッシュを見たのは私も初めてで、なんだかとっても得した気分になりました。
工事中でも観光客が途絶えることはなかったが、正直、現在も絶賛工事中
普段は、正直、そんなに頻繁に行くことがなかったノートルダム大聖堂ですが、むしろ、この5年間の工事中は、近くに寄ることがあれば、「どのくらいできたかな?」と様子を見に行くことが増えた5年間でした。そんな大聖堂内部には入れないことは重々承知しつつも行く・・というのは、私だけではなかったようで、この間も観光客の足は途絶えることはありませんでした。まず、比較的パリの中心部にあって、行きやすい場所にあるということもありますが、「外から見るだけでも一目だけでも見たい!」と思う人はけっこういるようで、また、そのことをパリ市はよくわかっており、パリ市は、「工事中でも見せる姿勢」を崩さず、外部の囲いには、工事中の様子を映したパネルに解説をつけて展示したり、正面には座ってノートルダムを眺められる段になった客席を設けたりしていました。
ノートルダムの建築物の解説パネルなどは、ご丁寧に、フランス語と英語の両方が表示されており、さすがに工事中でさえも、観光客を逃さない観光大国!と思った記憶があります。
そして、現在、華々しく、ノートルダム大聖堂は再開しましたが、周囲をぐるっと歩いてみると、実のところ、セーヌ川とは反対の北側の側面や裏側などは、まだまだ絶賛工事中です。ただ、大聖堂内だけでも再開できるほどに復興したのは、本当にフランスでは「不可能を可能にした!」とも言うべく、本当に偉業で、これは、火災当日になんとかノートルダム大聖堂を守ろう、被害を最小限に留めようとした消火に携わった人々、焼け果てないように内部の歴史的宝物を避難させた人々とこの修復工事に携わった人々の力があわさった偉業であったと思います。
ただし、この復興工事は、やっぱり奇跡的な偉業?であったに違いなく、建築・建設の専門家は、「もし、今、再び、このノートルダム大聖堂で同じような火災が起こったとしたら、もう今度こそ、5年以内どころか、10年経っても工事は終わらないだろう」と言っているそうです。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR