England Swings!
1週間に嵐が3つやってきた!
2月14日のバレンタインデーに始まった先週、英国は1週間で3つの嵐に襲われた。風が強い日が多く感じるこの国でも、さすがにこれは2015年に気象観測のシステムが変わってから初めてのことだそうだ。特に2番目のストーム・ユーニス(Storm Eunice)は、規模が大きくて影響を及ぼす範囲も広かったうえ、珍しく首都のロンドンに最高レベルの警報が出されたこともあって、何日も前から注意が呼びかけられていた。
地震や台風に慣れた日本から来ると、この国は自然災害が少ないと感じる。そのせいか、これまであまり気にしたことがなかったので、今回の報道では嵐についてずいぶん学んだ。嵐に名前をつけるようになったのは2015年とわりと最近のことで、名前がつくのは風速が時速39マイル以上のものだけだ。これはわたしの計算によると毎秒約17.5メートルで、日本で台風と呼ぶ基準は風速17メートル以上のようなので、風の強さに関する限り、だいたい日本の台風と同じような規模と思っていいようだ。ちなみに嵐の名前は、毎年9月から数えて1年ごとに、アルファベット順にAから男女の名前を交互につけていく。アメリカなどの他の機関と合わせるために、Q、U、X、Y、Zから始まる名前は使わないそうだ(この文字が頭にくる名前は少ないのだと思う)。
2月16日、まず最初にやってきたのはストーム・ダドリー(Storm Dudley)だった。Dで始まるので、去年の9月から数えて4番目の大きな嵐ということになる。このダドリーは、主に英国北東部で大暴れして、交通機関が乱れる、木が倒れるなどの大きな被害をもたらした。最大風速は時速80マイル(約129キロ)だった。
続いて2月18日に広い範囲で英国を襲ったのがストーム・ユーニスだ。襲来前から数十年ぶりの最大最強の嵐と言われて、早くから最高レベルの警報がロンドンにも出され、ニュースでもトップ扱いで用事がなければ外に出ないようにと注意がうながされていた。
学校や仕事場は前日から休みを決めたところも多く、ロンドンでは安全に過ごすようにと市長が動画で呼びかけたので、コロナで街が閉鎖された時のことをつい思い出して不安な気持ちになった。家で仕事ができない夫はいつものように朝早く出かけて行き、その朝のロンドン中心部はいつもより人が少なく、「ロックダウンの初めの頃みたいだった」と言っていた。
当日は朝から風が強く、ごうごうと音がしていた。ストーム・ユーニスが記録した最大風速は時速122マイル(時速約196キロ、秒速54メートル)。観測史上イングランド最高を記録した。これは日本の台風でいうと、死者・行方不明者を5000人以上出した昭和の大災害、伊勢湾台風(1959年、最大風速は秒速約55.3メートル)に近く、やはりとても大きいことがわかる。
わが家の窓からは、風で周囲の木々が大きく揺れているところや、ちょっとした風でよく倒れている、フラット(集合住宅)の共有の庭のベンチがやっぱり倒れているのが見えたくらいだったけれど、報道やSNSでは、灯台より高くなって岸に打ち寄せる波、道路や車の上に倒れ込む大木、風にあおられて空高く舞い上がったトランポリン(遊具としてネット付きの小さいトランポリンを庭に置く家庭が多い)やごみ収集のバケツが紹介されていて驚いた。そういえば嵐の前に出された注意に、「いろいろ飛んでくるので気をつけて」とあって不思議だったのだけど、こういうことなんだ。家の周りにあるものは片付けておきましょうというアドバイスも一応あったけれども、道ばたにごみも落ちているし、木の枝も折れるし、やたらに出歩くと何が落ちてくるかわからないのだな。怖い。
やはり写真や映像はインパクトがあるので、当日に話題になった大きな被害をほぼ網羅しているBBCの日本語でのこのニュース映像をどうぞ。写真が多く入ったニュース記事(日本語)はこちらから。
BBCニュース - 記録的な暴風、イギリス各地で倒木などの被害 3人死亡 https://t.co/NbViZ5pv7S pic.twitter.com/o32CBXVGiN
-- BBC News Japan (@bbcnewsjapan) February 19, 2022
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile