England Swings!
伝統料理に使われるスエットは心も体も温めるのかもしれない
バターと同じ働きをするスエットは、クリスマスに食べるミンスパイやクリスマス・プディングなど、伝統的な甘いパイやお菓子にも使われる。お菓子の場合は蒸す調理法が多く、日本でいう蒸しカステラのようなスポンジ風になり、蒸し時間を長くすると生地がずっしりかたくなっていく。
告白すると、わたしスエットを使った料理がそんなに得意ではない(ついでにいうとバターたっぷりの料理もあまり得意じゃないので、スエットのせいばかりではないと思う)。とにかくやたらにお腹がいっぱいになるし、料理によっては動物性のにおいが気になることもある。だから自分でスエットを使って料理をしたことはなかった。たまに食べるから「なるほどこういう味もあるのね」と楽しめるのであって、それなら夫が作るときだけでじゅうぶんだったのだ、これまでは。
ところがチャンスは突然やってきた。寒波がロンドンを襲って雪も降り続いていた今月半ば、夫が作った鶏の煮込みが大量に残ったことがあった。これをどうしようかと考えていて、ふとダンプリングを作ってみることを思い立った。ダンプリングとはスエットを使った丸めたお団子のこと。ダンプリンが大好きだし、鶏肉と根菜をトマトベースで煮込んだものにこれを入れたら、きっと体がぽかぽかあったまると思ったのだ。
こんな風に突然思いついても、わが家にはスエットが常備されているので大丈夫。自分で料理をしたことはなくても、夫が使うスエットは肉屋で買ってくるものではなくて、この箱だということくらいは知っていた。
(夫が主に使っているスエット、商品名アストラ。オリジナルのこの箱は牛の脂を使ったものだが、菜食主義者が増えているこのお時世なので、なんと野菜から作ったベジタリアン版も売っている。筆者撮影)
初めて使うついでに原材料をじっくり見てみると、牛脂は85%だけで、あとは小麦粉やカルシウムや鉄分が加えられている。それでも、箱に入っているこのスエットはどこのスーパーでも簡単に手に入るし、夫によれば、すでに細かく削られているので便利だそう。肉屋で買えるのはかたまりなので、自分で削らなければならないのだ。
箱から出して触ってみると、少しふんわりしている。脂でぎとぎとかと思いきや、意外にさらさら。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile