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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

荒波に揺らぐイタリア、コンテ首相続投への希望

トラジメーノ湖、漁船とパッシンニャーノの湖畔の遊歩道 2020/12/16 photo: Naoko Ishii

 どうかコンテ首相に引き続き政権を担ってほしいと思いつつ、ニュースや新聞を見ることの多い今日この頃です。そして、最近の世論調査によると、わたしと同じように考えているイタリア人が、他にも大勢いるようです。

 政権に革新の風をもたらしてはくれるけれど経験の少ない五つ星運動と、国民の権利や自由・平等を大切に考え、経験もあるけれど、内部でもめてまとまらないきらいのあった民主党が、何とか一つの旗のもと、イタリアが、新型コロナウイルス感染症の拡大や経済の危機という大きな荒波を乗り越えられるようにしていくためには、コンテ首相が舵を取ることが不可欠のように、イタリアに暮らす一外国人としての個人的感想ではありますが、そう感じています。コンテ首相は、自らの党を持たないために、国会での票の確保に苦労してはいるのですが、党を持たぬおかげで、自分の理想や信条にとらわれずに、柔軟に対応し、野党や各州知事の話も聞き、新型コロナウイルス感染拡大や経済の危機を、まとまりにくい皆の意見や要望をまとめて、切り抜けていくことができていたのではないかと思うのです。

 ワクチンの入手や接種、新型コロナウイルスや経済の危機など、重大な問題に直面し、選挙などという状況ではない上に、万一右派が選挙で勝利を収めたら、国の政治も感染症対策もあってはならない方向に向かってしまい、取り返しのつかないことになってしまうと案じています。

 現在の野党である右派の代表政党は、ベルルスコーニ率いるフォルツァ・イタリアはさておき、イタリアの同胞代表のジョルジャ・メローニも北部同盟代表のサルヴィーニも、移民や亡命者、イスラム教徒など、異なる宗教や文化を持つ人々に対して、差別的な発言を公然と繰り返し、また、多くのイタリア人が感じる経済的困窮の原因を移民になすりつけ、国民のやりきれない不満や怒りを移民に向けてきました。そして、現在もまた、長いロックダウンや経済的苦境に対する人々の不満に訴えて、現政府の無能を説き、右派からなる内閣を、あるいはすぐに選挙をなどと主張しているのです。二人ともトランプの熱狂的な支持者でもありました。

 1月27日の国際ホロコースト記念日には、恐ろしい悲劇が2度と繰り返されることのないようにと、例年、イタリア各地で記念式典が催され、テレビでも多くの関連番組や映画が放映されます。

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パッシンニャーノ、トラジメーノ湖 桟橋のユダヤ人救出記念の板 2021/1/13 photo: Naoko Ishii 

 ウンブリア州のトラジメーノ湖畔の村、パッシンニャーノ(リンクはこちら)では、第二次世界大戦中、マッジョーレ島に強制収容されていたユダヤ人30人を、1994年6月に、トラジメーノ湖の漁師15人が、神父の助けを得て、救出しました。桟橋に設置されたユダヤ人救出の記念の板には、その人間性にあふれた勇気ある行動が「将来の世代を導く灯台の光となるように」という言葉も添えられています。

 全世界的に、そして国として厳しい状況にある中で、イタリアが誤った方向に行くことのないよう、そして、今この肝心なときに、信頼できる政府が新型コロナウイルス対策やワクチン接種の推進、経済の立て直しを進めていけるためにも、コンテ首相、五つ星運動、民主党に続投してほしいと願っています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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