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平野美紀|オーストラリア

シドニーのロックダウンは『モックダウン』? ロックダウン 2ヶ月間を振り返る

ロックダウンはどれも同じではなく、すべての業種が閉鎖されるとは限らない。ただ、シドニーでは開け続けることで感染制御効果に悪影響があったとする声が大きい。(Credit:Delpixart-iStock)

豪国内では、「モックダウン(似非ロックダウン)」だと揶揄されているシドニー/ニューサウスウェールズ州のロックダウン。

ニューサウスウェールズ州では、これまで一部の地区のみのロックダウンはやったことがあるものの、大都市圏全域はおろか、州全域でのロックダウンはやったことがなかった。それは、新規市中感染ケースが見つかっても、感染者が出た地区の徹底検査と隔離、感染経路追跡(トレース)でウイルスを封じ込めてこられたからだ。

今回、初めて行ったシドニー/ニューサウスウェールズ州の広域ロックダウンは、前回のコラムに書いたように、他州に比べ、感染者が見つかってからの規制(ロックダウン)開始が遅れ、対象地域が曖昧で、その規制内容も緩く、効果が限定的だと批判されてきた。

周囲からのプレッシャーもあり、州政府は少しずつロックダウン対象地区を広げたり、規制を強化するなどしてきたが、他州に比べると抜け穴の多い施策で、効果があまりでていない。しかも、「他州がこれまでに行ったどのロックダウンよりも厳しい」と自画自賛する州首相の発言に対し、豪ABCのファクトチェック・チームから反証記事で批判される始末...。

そこで、具体的にどのように『緩い』のか、時系列で追ってみようと思う。

1人の感染確認から、ニューサウスウェールズ州初のシドニー大都市圏全域ロックダウンまで

6月16日の発表では、新規市中感染ケース0であったが、毎日の集計の締切りである前日夜8時以降に1人の感染者が確認されたことが、州政府の会見で発表された。(この1人は翌日集計分にカウント)

6月17日 この日の発表で、昨日締め切り後に確認された1人を含む、2件の新規市中感染ケースが確認された。この日以降、毎日、新規市中感染者が増え続けていき、新型コロナウイルス関連規制を少しずつ強化していくのだが・・・

6月18日 シドニー大都市圏とその周辺地区であるブルーマウンテンズ、セントラルコースト、ウーロンゴン&イラワラ地区の住民に対し、この日から6月24日(木)0:01まで以下の3つの規制に従うよう勧告。

※以下、シドニー領事館 2021/06/18 配信のニュースメールより抜粋。

(1) 公共交通機関でのマスク着用義務。
(2) 小売店、劇場、病院、高齢者介護施設などの全ての公共屋内場所でのマスク着用を強く推奨。また、接客スタッフのマスク着用を強く推奨。
(3) 高齢者介護施設や障害者施設への不要不急な訪問の回避。訪問する場合はマスクを着用し、面会は1日2人までに制限。

【この時点でのダメポイント】
公共交通機関利用時を除く、マスク着用があくまでも「強く推奨」となっていることに注意。

6月23日 この日の16:00から1週間、シドニー大都市圏、ブルーマウンテンズ、セントラルコースト、ウーロンゴン&シェルハーバー地区に対して、新型コロナウイルス関連規制を厳格化。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

6月25日 この日の発表では、新規市中感染ケースは11件であったが、集計が締め切られた前日夜8時以降にも17件が確認され、最初の感染者を含め、合計65人がボンダイ・クラスターに関連していたことから、ボンダイとその周辺の東部4地区に、7日間の「ステイ at ホーム」をオーダー。外出できる理由を以下の4つとし、4地区外者に該当地区への立ち入りを見合わせるよう要請。

※以下、シドニー領事館 2021/06/25 配信のニュースメールより抜粋。

(1)食品等必要不可欠な買い物
(2)医療・介護ケア
(3)屋外での運動(10人以下)
(4)必要不可欠な通勤・通学

【この時点でのダメポイント】
他州ではこの時点で、きっちりと「(スナップまたはサーキットブレーカー)ロックダウン」として規制を課しているところ、「規制を遵守するように」といういわば「お願い」程度であった。外出できる理由は4つのみとしながらも、ビジネスの閉鎖は要請していないため、小売店等はオープンしたままで、必需品以外でも買い物しようと思えばできる状態であったことにも注意。また、この時点では移動距離などの制限はない。

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ロックダウン中であっても、スーパーや食料品店など、生活必需品を扱う小売店はどこの州もオープン。買い物に行くことは可能だ。(Credit:Daria Nipot-iStock)

6月26日 この日発表の1日の感染者数は29となり、6月16日に1人の感染確認後、感染者数の合計が82件となったことから、「ステイ at ホーム・オーダー」の対象地区をシドニー大都市圏全体へ拡大し、規制を強化。期間を6月26日(土)午後6:00から7月9日(金)午後11:59までとすると発表。ニューサウスウェールズ州としては、シドニー都市圏全体での規制は初めて。

※以下、シドニー領事館 2021/06/26 配信のニュースメールより抜粋。

stay-at-home ordersの対象地域を拡大し、シドニー大都市圏、Blue mountains地域、Central Coast地域及びWollongong地域にも適用することを発表しました。該当する方々は、6月26日(土)午後6時から7月9日(金)午後11時59分までの間、以下の必要不可欠な理由以外での外出は認められません。
(1)食品等必要不可欠な買い物
(2)医療・介護ケア(新型コロナウイルスワクチン接種を含む)
(3)屋外での運動(10人以下)
(4)必要不可欠な通勤・通学

2 NSW州政府は、上記4地域での同期間中の規制につき以下のとおり発表しています。
(1)上記期間中、コミュニティスポーツは禁止
(2)6月27日(日)午後11時59分から結婚式は禁止
(3) 葬儀は4平方メートル規則適用、人数は100人以下に制限。屋内で行う場合、マスク着用を義務化

3 上記4地域以外のNSW州内全域では、6月21日(月)以降に上記4地域を訪問した人は、同地域を離れてから14日間外出制限令に従う必要があるほか、以下の規制が新たに適用されます。
(1)家庭への訪問者は5人まで(子供を含む)。
(2)オフィスを含む全ての屋内施設及び屋外の行事でのマスク着用を義務化
(3)屋内で着席しない形式での飲酒は禁止
(4)屋内観劇中の聴衆による歌唱、及び屋内礼拝参加者による歌唱は禁止
(5)ナイトクラブ等の屋内接客店舗でのダンスは禁止(ただし、結婚式では20名までであれば可)
(6)ダンス及びジムのクラスの人数は最大20名までとし、参加者にはマスク着用を義務化
(7)屋内外で4平方メートル規則を適用(結婚式及び葬式を含む)
(8)着席の屋外行事の最大人数は、着席上限人数の50%まで

このように、6月16日に感染者1人が確認されて以降、毎日、感染者が増え続けていたにも関わらず、最初のクラスターが65人にまで増えた25日まで、大した規制をしていなかった。

そして、ようやくシドニー大都市圏全域で「ステイ at ホーム・オーダー」をだしたのは26日と、最初の新規感染ケース確認から10日も経っていた。そのため、この日の新規市中感染は1日29件まで増加、最初の感染者から合計82件になっていたうえ、この10日間の間に、感染エピセンターが東部から西部へ移り、西部にクラスターができてしまっていた。

6月25日のところでも触れたが、この時点では、飲食店の店内での飲食ができないくらいで、商業施設や小売店舗は、通常通りオープしており、このことは、他州でロックダウンを経験している人たちからも、かなり批判された。

また、この日、シドニー大都市圏全域でステイ at ホーム・オーダーがだされたことで、日本語のメディアでは「豪・シドニーで初の全面ロックダウン」といった感じで報道されたが、この時点の「ステイ at ホーム・オーダー」は、規制がかなり緩い「ソフト・ロックダウン」で、その中身は、他州が行ってきたロックダウンとは大きく異なっていることに注意したい。

次のページ:シドニー大都市圏全域でステイ at ホーム・オーダーがだされたが、他州が行っているロックダウン同等の厳格な規制を一気にやらず、小出しに強化していくやり方が批判の的に・・・>

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著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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