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平野美紀|オーストラリア

シドニーのロックダウンは『モックダウン』? ロックダウン 2ヶ月間を振り返る

ロックダウンの厳格な規制を一気にやらず、小出しに強化していくやり方が批判の的に・・・

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ロックダウン中のシドニー東部ボンダイ・ビーチで、ランチ休憩をとる作業員たち。8月11日撮影。(Credit:Kirsten Walla-iStock)

※ここから便宜上、「ステイ at ホーム・オーダー」を「ロックダウン」と記載し、念のため、ロックダウン反対デモが行われた日についても列記します。

7月7日 ロックダウンの1週間延長(7月16日(金)午後11:59まで)決定。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

7月9日 シドニー大都市圏でのロックダウン規制を強化。不要不急の外出に加え、毎日の運動での行動範囲を在住する自治区内、または、自宅から10kmまでとし、必需品の買い物は1家庭1人のみ、家族以外の人との車の相乗り禁止、屋外での運動は同居家族を除く2人以下(それまでは10人まで可としていた)に変更するなど、若干の規制強化が行われた。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

【この時点でのダメポイント】
他州でロックダウンとなった場合、例えば、ビクトリア州では最初から「自宅から5km」、クイーンズランド州では最初から「自宅から10km」など、行動距離範囲を限定しているが、ここまでやっていないかった。また、この時点で行動距離範囲が限定されたのは『屋外での運動』のみで、買い物であれば移動距離に制限がないことに注意。

7月14日 シドニー大都市圏全体で、ロックダウンの2週間延長(7月30日(金)午後11:59まで)決定。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

7月17日 ここでようやく、生活必需品を除く、ほとんどの(重要でない)小売店の閉鎖を指示。これは、7月16日にオーストラリア医師会が声明を出し、「重要でない小売店や必要のないサービスをすべて閉鎖し、自宅からの移動距離の制限を見直すなど、さらなる措置を講じるよう求めた」ことが大きい。

また、この措置に加え、屋内施設でのマスク着用義務化のほか、シドニー南東部と西部の3地区住民に対し、域外への通勤を不可とし、どうしても通勤する必要がある場合は、3日ごとの検査を必須とした。

※以下、シドニー領事館 2021/07/17 配信のニュースメールより抜粋。

7月17日(土)午後11時59分以降、
(1)スーパー・食料品店、薬局、ガソリンスタンド、銀行、郵便局等を除いた小売店の閉鎖
(2)現行の外出制限令に加えて、Fairfield、Canterbury-Bankstown、Liverpool 市在住者は、緊急対応及び医療従事者を除き、市外への通勤は不可。市外に通勤する場合は3日ごとの新型コロナウイルス検査が必須
(3)外出時のマスク携帯と屋外のショッピングモール等でのマスク着用が義務化
(4)同居者以外との車の相乗りは禁止

【この時点でのダメポイント】
オーストラリア医師会からのプレッシャーもあって、ようやく重要でない小売店やサービスの閉鎖となったが、この時点でもまだ、大型ホームセンターやガーデニングセンターなどはオープンしていた。これには、他州からだけなく、州民からも疑問の声が相次いだ。

7月24日 シドニー、メルボルンでロックダウン反対デモ参照

7月28日 シドニー大都市圏全体で、ロックダウンの4週間延長(8月28日(土)午前0:01分まで)決定。

ここでようやく、行動範囲の限定規制(自宅から10km)を毎日の運動だけではなく、買い物の行動範囲にも適用。クラスターがでて感染拡大しているシドニー南西部及び西部に位置する8地区を「感染蔓延が最も懸念される地区」に指定し、この地区外へ出られるのは、仕事であっても許可を得た人のみとし、域外へ出る必要がある人は定期検査を義務付け。また、一人暮らしの人が、予め家族や友人などから一人を指定し、自宅への訪問を許可する「シングル・バブル制度」を導入。

※以下、シドニー領事館 2021/07/28 配信のニュースメールより抜粋。

2 7月28日(水)深夜から以下が実施されます。
(1)食品等必要不可欠な買い物は、在住する市(LGA)内または自宅から10キロ圏内に限定されます(地元で入手できない場合を除く)。
(2)以前からのFairfield、Liverpool、Canterbury-Bankstown、Blacktown、Cumberland各市(LGA)在住者に加え、Parramatta、Campbelltown、Georges River各市在住者も、許可された労働者 (authorised workers)でない限り、在住する市を離れての仕事はできません。 許可された労働者の詳細については、NSW 州政府のウェブサイトをご確認ください。

3 7月31日(土)午前0時1分から以下が実施されます(ただし、上記2(2)の8対象市では以下の(1)から(3)は適用外)。
(1)敷地内に居住者がいない場所での建設工事は、4平方メートル規則を条件として再開可能になります(新型コロナウイルス安全計画を遵守することが条件)。
(2)居住者と非接触で行える清掃等の作業は再開可能になります(ただし、屋内2人、屋外5人まで)。
(3)一人暮らしの人は、予め家族や友人の一人を指定し、その人の訪問を受けることが可能になります(singles bubble制度)。
(4)Canterbury-Bankstown市在住のすべての許可された労働者、Fairfield・Cumberland市在住の介護・医療従事者(清掃員、料理人、警備員等の介護・医療サポート関係者を含む)が市外に通勤する場合には、72時間毎に新型コロナウイルス検査を受ける必要があります。ただし、関連する労働者は、本日(7月28日(水))から最初の検査を受ける必要があります。

【この時点でのダメポイント】
他州では、同居してない人を自宅へ招き入れる「シングル・バブル制度」のような特例は、認められてないことに注意。

7月30日 「感染蔓延が最も懸念される地区」に指定された8地区で行動可能範囲を10km → 5kmに限定。また、屋外外出時はいかなる場合でもマスクを着用、「シングル・バブル制度」で指名された人も、移動範囲を自宅から5km以内に限定。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

【この時点でのダメポイント】
行動距離範囲規制を自宅から5kmまでとしたのは、シドニー南西部と西部の「感染蔓延が最も懸念される地区」に指定された8地区のみであった。

また、この規制強化に先駆け、29日に州警察が、この地区の警備及び規則違反者取り締まり強化のために、約300人の豪軍兵士の派遣を要請。これは、「ステイ at ホーム」をきちんと守っているか、個別訪問で確認したり、地区外へ繋がる主要道路で行先を確認したりすることが主な任務で、あくまでも州警察をサポートするための派遣であるため、武器は不携行。(参照

7月31日 シドニーで2回目のロックダウン反対デモが予定されていたが、州警察が先回りで警備し、回避された。参照

8月10日 シドニーで最初にステイ at ホーム・オーダーがだされた地区の住民が、不動産の下見と称し、シドニーから760 km 以上離れた州北部のリゾート地・バイロンベイへ移動して、子供2人と共に滞在。体調を崩して検査した結果、3人とも新型コロナの陽性だったことが判明。彼らが訪れた飲食店などすべての場所が、感染リスクのあるホットスポットとなった。(参照

不動産の下見でウイルスが地方へ拡散したことを豪国内の各方面から問題視され、これ以降、投資物件としての不動産の下見は禁止とした。

【この時点でのダメポイント】
不動産の下見であれば、ロックダウン中でも移動可能となっていた。この件で、投資物件としての下見は禁止としたが、自らの居住用物件については禁止せず。これは現在もそのまま。

8月14日 ここでようやく、ロックダウンを州内全域へ拡大。期間は8月22日(日)午前0:01までとすると発表。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

州全域へと対象を拡大する前に、ニューカッスルやポートスティーブンスなど、シドニー大都市圏北部の地域へ対象を徐々に拡大していっていたが、あちらこちらにポツリポツリと感染者が確認され、クラスターができ始めてしまったことから、州全域へと拡大を決めた格好だ。

【備考】オーストラリア国内で州全域ロックダウンをやったことがあるのは、ビクトリア州(昨年と今年)とニューサウスウェールズ州(今回)だけ。その他の州は、感染者が確認された主要都市部やピンポイントの地域のみ。

【この時点でのダメポイント】
ロックダウン対象地区を少しずつ拡大するというやり方だったため、該当地区へのロックダウン決定にまごついているうち、陽性者が移動してしまい、どんどん地方へ拡散してしまった。

8月16日 ここでようやく「行動可能範囲を自宅から5kmに限定」をシドニー大都市圏全体へ適用。規制違反者が続出していることから、罰金値上げなど、規制を強化。

※以下、シドニー領事館 2021/08/14 配信のニュースメールより抜粋。

8月16日(月)午前0時1分以降、シドニー大都市圏及び一部NSW州地方部で実施中の外出制限令において、外出規制の例外理由として認められている食品等必要不可欠な買い物、及び屋外での運動の移動の範囲が、現在の10キロ圏内から5キロ圏内に制限されます。

2 8月16日(月)午前0時1分以降、公衆衛生命令違反に対する罰金が厳しくなります。
(1)自己隔離規則に違反した場合、5,000ドルの即時罰金。
(2)許可に対する虚偽(lying on a permit)を行なった場合、5,000ドルの即時罰金。
(3)接触追跡に関する虚偽(lying to a contact tracer)を行なった場合、5,000ドルの即時罰金。
(4)2人の屋外運動・レクリエーション規則に違反した場合、3,000ドルの即時罰金。
(5)許可された仕事のためのNSW州地方部への入域、不動産物件の下見(inspection)、及びセカンドハウスへの移動に関する規則に違反した場合、3,000ドルの即時罰金。

3 8月21日(土)午前0時1分以降、NSW州地方部への入域の許可制度が導入されます。以下のいずれかの理由でNSW地方部への移動を希望する方は、サービスNSWで利用可能になる許可を持っている必要があります。
(1)Fairfield等、外出制限令を特に厳格に適用している12市(LGA)からの許可された労働者。
(2)不動産調査。NSW州地方部の不動産を調査する人は誰でも、居住のための家を真に必要としていなくてはいけません。(投資用不動産は不可)。
(3)セカンドハウスへの移動。同住居を仕事用施設として利用している場合、または同住居が緊急の補修・修理を必要とする場合にのみ許可されます(その場合、1人のみ移動可能)。

8月19日 ニューサウスウェールズ州全域でのロックダウンを8月28日(土)午前0:01まで延長すると発表。この時点で、州内での新規市中感染ケースは、681件/日。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

8月20日 シドニー大都市圏でのロックダウンを9月末まで延長決定。「感染蔓延が最も懸念される地区」に指定された12の地区で「夜間外出禁止令」が出されるなど、規制強化。(詳細:シドニー領事館配信のニュースメール

8月21日 シドニーやメルボルンなどの主要都市でロックダウン反対デモ参照

8月23日 各方面から疑問視され、批判されていたハードウェアショップ(大型ホームセンターのような店舗)やガーデニングセンター、事務用品店などを閉鎖。これは州政府による強制的な閉鎖ではなく、あくまでも「お願い」レベルにとどまっていたが、大手各社が応じた形になった。ただし、対象となったのはシドニー大都市圏内の店舗のみ。(参照

・・・と、上記で列挙してきたここまでの規制を 他州では新規市中感染者が見つかると、ほぼその日のうちに一気に課すことがほとんどとなっているのに対し、ニューサウスウェールズ州では、ロックダウンの決定が遅れ、2ヶ月かけてだらだらと少しずつ規制を強化してきた格好だ。そのうえ、規制の対象地域もわかりにくく、住民の多くが完全に理解できていないのではないかと思う。

このように、だらだらと少しずつやることで、結果的にロックダウンを長期化させ、住民や経済界の不満が大きくなってしまっているのが現状だ。

たしかに、デルタ株による感染伝播がこれまで以上に速いことを考えると、感染拡大しやすいということはあるにせよ、このような州政府の判断の遅さと緩いロックダウンが感染拡大に拍車をかけてしまったといえるだろう。

州政府は、自らの判断の誤りで感染拡大が制御不能になってしまったにも関わらず、専門家や識者らの他州並みの強いロックダウンを求める声を一蹴し、今回このような感染拡大になってしまう前までしっかり行ってきた感染制御対策をすべてドブに捨て、高いワクチン接種率を達成させることでロックダウンを終わらせ、すべてを再開したい考えだ。

しかし、他州は、接種率に関係なく、感染拡大している限り、入州を拒否する構えを見せており、現在、ニューサウスウェールズ州は、他のすべての州から州境を閉鎖されている...(涙)〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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