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平野美紀|オーストラリア

パンデミックを乗り越え、未来へつなげる観光キャンペーン ~豪ビクトリア州

世界的パンデミックの最中、再三のロックダウンで大きな打撃を受けている地元ビジネスを支援する州内向け観光キャンペーン「Click for VIC 」

世界的なパンデミックで、旅行業界はどこの国でも大きな打撃を受けている。

オーストラリア国内で唯一、3回に及ぶ州全域ロックダウンを経験したビクトリア州は、ロックダウンによって、必須(必要不可欠)でないビジネスは度々一時閉鎖を余儀なくされ、移動制限のために観光客によって支えられていたビジネスも大きな打撃を受けてしまった。

こうした地元ビジネスの救済及び支援策として、ビクトリア州政府観光局が2度目のロックダウンが始まった直後の8月から展開しているのが、州内向けの観光プロモーション『Click for VIC』キャンペーンだ。

海外からのインバウンド観光客が当てにできない今、安定した国内=地元マーケットの再開拓はもちろん、あらゆる状況に対応できるビジネスの確立とその支援は必須。『Click for VIC』は、 「世界的な感染症パンデミック」という前例のない苦境が続くこの時期に、地元消費者の関心を地元に惹きつけて、地元ビジネスと繋げ、事業者の経営継続をサポートしようというのが最大の狙いだ。

一時しのぎではなく、将来を見据えて展開するビクトリア州政府観光局の新しいカタチの観光キャンペーンをご紹介!

観光地と観光プロダクトの魅力を再発見し、将来の旅行喚起に繋げる

キャンペーン映像では、州内各地の美しい風景と共にその地元の魅力的なビジネスを織り交ぜ、旅情を誘う。

今すぐにそこに行くことはできなくても、オンラインを通じてそこで生産されている食品やグッズ、もしくはバウチャー(商品券)を購入することで地元ビジネスを支えてもらい、再び訪れることができる日が来たら、ぜひ足を運んで実際にその店を訪れてみようと思わせることで、視聴者に訴求。自宅で過ごす時間が増えて外出欲求が強くなっている人々に地元の魅力を再発見してもらい、将来の旅行に誘い出す効果を狙った、いままでにない観光促進キャンペーンとなっている。

アートとグルメ旅が人気の州ならではの地産地消&ご当地再発見戦略

オーストラリア本土で最も小さい州であるビクトリア州は、海や山、歴史、街といった様々な見どころがコンパクトにまとまった州でもある。その地の利を生かし、州内各地からフレッシュな食材が集まることから、州都メルボルンはアートの街であると同時に、『食の都』としても知られている。

豪国内の旅行市場においては、グルメ集約都市としてのメルボルンを訪問するだけに留まらず、州内各地に点在するローカル生産者を訪ねて食べ歩くご当地グルメ旅が、ビクトリア州最大の楽しみのひとつにもなっているほどだ。

週末などに開かれる『ローカル・マーケット』には、地元生産者が直接出店し、採れたて及び作り立てのフレッシュな食材が並ぶ。また食品関係だけでなく、地元のアーティストが作った作品など、そこに行かなければ出会えない希少さも人気の理由といえる。

こうした、地元にありながら、普段ではなかなか見つけにくい個人や家族経営などの小さなビジネスにも、目を向けてもらおうというのが、この『Click for VIC 』キャンペーンの狙いのひとつでもある。

地元ビジネスの持続可能なオンライン市場参入を推進

ビクトリア州のダニエル・アンドリュース州首相は、「ビクトリア州は、世界でも最高クラスの生鮮食品、ワイン、アート、食器やインテリア用品などがたくさんある。しかし、このパンデミックで多くの小規模生産者が打撃を受けている」と述べ、このキャンペーンのために、これまでのコロナ経済対策予算に加え、850万豪ドル(約7億800万円)を支出すると発表した。(参照

また、州内のビジネス支援パッケージの一環として、独自のEコマースやマーケットプレイスでの持続可能なオンライン・プレゼンス構築のためのトレーニングと支援のために150万豪ドル(約1億2,500万円)を計上し、生産者のオンライン市場参入をバックアップ。時間に余裕のあるこの時期を逆利用して、安定したオンラインでのビジネスを確立してもらおうというわけだ。(参照

基本的には、州民による地元支援行動をより強固なものにするための観光キャンペーンであり、『地元コミュニティは、そこに住むコミュニティの皆で支え合う』という意識が根強いオーストラリアらしい施策といえるかもしれない。

全豪オープンとロックダウンで再注目

しかし、州内向けキャンペーンというところに歯がゆさも感じる。本来なら豪国内全土へ向けて発信し、どこからでも注文できるようにして欲しいところだが、この国は日本のように物流システムが発達していないという問題もありそうだ。

ところが、図らずも全豪オープン開催中に3度目のロックダウンとなったことから、『Click for VIC 』キャンペーンが世界中のテニス・ファンの目にも触れることになり、再注目されるきっかけになった。

世界的パンデミックがおさまり、自由な行き来が戻って来た時、世界のテニス・ファンが再び全豪オープンへやってくることになるだろう。その時にきっと、『Click for VIC 』キャンペーンで目にしたビクトリア州の美しく、そそられる映像を思い出し、訪問してくれるにちがいない。

Click for VIC 公式サイト

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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