NYで生きる!ワーキングマザーの視点
NYで舞台女優の大野さんが英語で声のお仕事をはじめたきっかけとは?
HONDAディーラー USAで英語の声(ナレーション)のお仕事を得た大野さん。そもそも大野さんは、舞台女優さんなのだけど、なぜ声のお仕事を始めたのでしょうか?しかもアメリカにいるのは英語(母国語)の流暢なアメリカ人ばかりなのに、わざわざ少しばかり日本語アクセントがある人を選ぶ理由とは。
まずは、こちらが大野さんのHONDAディーラーでの声のお仕事です。
──これまで声のお仕事もやっていたのですか?
これまでもちょこちょこエージェントを通してナレーションや、ラジオドラマのスタジオ録音はやっていました。でもパンデミックで家にいることになって、俳優の仕事ができなくなったので、家で働ける声のお仕事をするため、まずはマイクを買いました。プラットフォームを使って、オーディションサイトなどで応募していったんです。すると、意外にも声のお仕事が増えていきました。家に録音ブースを作り自宅で録れるようになったので、機会が増えました。
オンラインで見つけてくれた日本にいる方から、英語の声がいるからと、お仕事をもらうこともあります。HONDAのお仕事は、アジア系のアクセントのある英語を必要としていたんです。ディーラーのコマーシャルで、お客さんにはアジア系が多く、店員さんにもアジア人がいたりするので、アジア系のアクセントがあるほうがいいかなぁ〜という感じで選ばれました。
私の英語は、少しだけアジアのアクセントが入ってるんですよね。それでもキレイな英語ということで使っていただきました。
──そういったオーディションは、どこで探しているんですか?
バックステージ(Backstage.com)っていうオーディションのサイトです。
──大野さんは、英語の発音が本当にキレイですよね。
英語に関してはちゃんと学んできたので、それが認められました。実は最近EPT英語発音検定という資格を受けて、なんと満点を取ることができました!それに加え英語のボイスオーバーのオファーをいただいたのは、自信につながってます。
──どのように英語の発音を練習したのですか?
本来、英語が好きで大阪大学では英語専攻で勉強してきたのですが、英語を完璧にしたいというのがあり、ちゃんと声を出すようにしていました。新しい単語を習ったときに、自分で正しい音声を聴いてリピートしたり、真似をしたり。ドラマや映画のワンシーンを真似て演じることで、同じ言い方で言ってみるということをやっているうちに、うまくなりました。
──アメリカに来たきっかけは?
お芝居をやりたくて役者を目指してたのですが、その前に英語をしっかりやっておきたかったので、英語をしっかり話せるレベルまで学んでアメリカに来ました。
こちらへ来て、舞台やミュージカルと、アメリカ人が聴ける英語がちゃんとしゃべれるというのは、お仕事につながるチャンスとして大きかったです。
──コロナ禍では、ステージや舞台がクローズして大変だったのでは?
オーディションも今は、既に始まってきています。パンデミック前も、セリフを言って演じたものをビデオで提出してから、演出家がビデオ選考後に会うという状況は 増えてきていましたが、今ではスマホで撮って、インターネットを使って送るというのが普通になってきています。
舞台に出る前もZOOMでオーディションする場合もあるのですが、実際に役者さんの全身を見ていないでしょうし、直接会ってないので、不思議な感じがします。
──私は近頃よくアジア系ヘイトクライムが怖くて、カーリーヘアのウィッグ(カツラのこと)をつけたりして外出することがあるのですが、髪型とかも、ウィッグをつけてしまえば、こういう髪型とかだって嘘もつけますよね?
オーディションする側は、本当に決める前に一回は実際に会うでしょうね。
──パンデミックになってからは、一般のお仕事の面接もZOOMですけど。仕事が始まってからも家でコンピューター使ってリモートワーク、ミーティングもZOOMなので、新しく入った人もZOOMでしか顔を見ることはなくて。
最初のご挨拶以降はカメラをつけない人も多いので、顔を知らないままってことも多いです。関係者以外には会うことがないらしいので、オフィスワークじゃないと別の部門で同じ会社で働いてる人さえも知らない状況ですよね。
エンターテイメント業界はどうなのでしょう?舞台もオンラインで観れるようになってきていますが、オンラインだけで舞台を演じることができるようになったらどうしますか?
見る人は会場へ足を運ばなくてよいので、見やすいかもしれませんが、自分としては寂しいですね。言ってる私もコロナ禍により、舞台を録画したものを観ることも増えたのですが。実際に演じている芝居を生で観るということはなくならないと思いますし、なくならないでほしいです。
オンラインでは、生の臨場感は伝わらないんです。舞台と映像の、まさしく違うところです。
演じる側だけでなく、その場の観客の反応も、生だからこそ。パンデミック後、久しぶりにシェークスピア・イン・ザ・パークの舞台を観に行ったとき、役者さんのやったことに反応して、子供が笑ったんです。それが面白くて観客の皆も笑いました。小さなことですが、それもその時の観客でしか起こらない舞台の醍醐味というか、ライブ感があります。
──今更ながら、舞台がNYである必要ってなんでしょう?
もちろん、ほかの街でもやってますが、NYには小さいのから大きい舞台まで一番多いので、私はNYでやりたいです。いろいろな可能性があるのがNYかなぁ〜と。
パンデミックが終わったので、そろそろ回復してきていますし。いろいろなプロジェクトが春から夏にかけて、出てきているんです。たまたま今週は舞台のオーディションを2回受けました。多いときは映像を2、3提出したり、ないときはまったくないです。
先日オーディションを受けたのですが、自分がやりたいと思った役に落ちたときは、へこみます。オーディションって恋愛に似ているって思います。舞台のキャラクターに惚れて、その役をやりたいから、ベストを尽くしても、こちらが好きだって思っていても、相手に選ばれないことがある。ふられると傷ついて、それでも時間がたったら治ってくる。気持ちを切りかえて次に行くのが大切なのです。
【プロフィール】
大野有梨香(おおのゆりか)
女優、兵庫県神戸市出身。2012年に渡米、Circle in the Square Theatre School, HBスタジオを経てニューヨークで活躍中。舞台はミュージカルからストレート、ドラマからコメディと幅広い。ブルックリンにあるThe Brick Theaterでの"The Adventures of Minami" ではタイトルで主役のアンドロイド役ミナミを演じ好評を得る。他にもマンハッタンのオフブロードウェイ劇場Ensemble Studio Theatre, Players Theatre、スタテン島のSundog Theatreなどで新作、話題作に出演し注目を得る。アジア人、日本人というステレオタイプにとらわれない役者を目指す。<写真 ©Yurika Ohno>
著者プロフィール
- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com