コラム

灼熱の甲府盆地で「地名の由来」を考察する

2019年08月23日(金)18時00分

◆ゲリラ豪雨に襲われる

石和を抜けて甲府市に入ったのが16時ごろ。夕方の空気を感じ始めたと同時に一帯に雲がかかかり、視線の先の山に夕立が降り注いでいるのがはっきりと見えた。やがて自分が立っている所でもポツポツと水滴を感じたと思うと、またたく間に大粒になり、雨足は滝のような勢いになった。典型的な局地的なゲリラ豪雨である。

以前の夏の夕立ちは、これほどまでに無慈悲で攻撃的だったろうか?「ゲリラ豪雨」は正式な気象用語ではなく、マスメディアがその神出鬼没な攻撃性から名付けた俗称だが、局地的大雨が2000年代以降目立って増えているのはデータでも裏付けられている。全世界的な気温の上昇が影響していると言われるが、もはや当たり前の夏の風物詩として受け入れなければならない段階だ。

一応備えはしていた。雨が本降りになる直前に折りたたみ傘を出し、メインで使っているミラーレス一眼レフカメラをリュックにしまった。代わりに、防水仕様の小型カメラを取り出し、視線の先に見つけた神社の木立を目指しつつ、ゲリラ豪雨の様子を静止画と動画で記録した。ひんやりとした強風と共にやってきた猛烈な雨は、30分ほどで去っていった。

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午後4時前、前方の山に雨が降り注いでいるのがはっきりと見えた

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雨足はまたたく間に「ゲリラ豪雨」に

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小さな神社の軒下に避難。30分ほどで豪雨は去っていった

◆若者の町を経て夕焼けに染まる古刹へ

雨が去って太陽が出るとまたたく間に暑さが戻り、湿度は昼間よりも増したように感じられた。じっとりとした汗をかきながら甲府駅の一つ手前の酒折駅に到着。スタートからの歩行距離は20kmに達していた。ここで今日は終了にしようとも思ったが、甲府駅まであと一息なのでもう一踏ん張り。酒折は、駅伝で有名な山梨学院大学がある町で、スーツケースを転がして帰省する学生や、スポーツウェア姿の学生の姿が目立った。まだ肌寒い梅の季節に東京の八王子を過ぎてからは、「若さ」がむしろ失われた町や村ばかり歩いてきたので、とても新鮮なような、懐かしいような気分だ。

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学生街の酒折を通過。この旅で久々に町に「若さ」を感じた

甲府の中心市街地に至る国道411号を歩いていると、道路標識に「善光寺」の表示が見えた。たとえにわかでも、長野県民の僕には聞き捨て、いや、目捨てならない文字である。恥ずかしながら、僕はここに来るまで、甲府にも善光寺があることを知らなかった。標識がある交差点からその方向を見ると、まっすぐに伸びた緩い坂道の先に、渋い朱色の山門が夕日に映えていた。明らかに計画的に作られた、由緒ある門前町が広がっていた。

こちらの善光寺は通称「甲斐善光寺」で、やはり武田信玄とのゆかりが深く、長野の善光寺とはいわば兄弟寺院だそうだ。言われてみれば、正方形のフレームに収まりが良い正面から見た威容は、長野の善光寺に似ている。夕焼けと相まって一種神秘的なその佇まいに吸い寄せられるように、僕は甲府駅方面に向かうのをやめて、山門に至る坂道を上っていった。

すると、前方から夕方の散歩中の柴犬がやってきた。犬が大好きな僕は、どんな旅でも、ラストカットはなるべく犬の写真で終わらせたいと思っている。純粋な心を持った犬の姿を写真と記憶にとどめつつ、きれいに1日の旅を締めたい。そんな願いが叶ったので、僕はその柴犬を撮ってからカメラのスイッチを切り、山門に達した所で今日のゴールとした。次回は、善光寺の境内を探訪した後、甲府の中心で夏の終わりと秋の訪れを感じてみたい。

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旅の終わりは犬の写真で。夕日に映える甲斐善光寺


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今回歩いたコース:YAMAP活動日記

今回の行程:塩山駅―甲斐善光寺(https://yamap.com/activities/4278939)※リンク先に沿道で撮影した全写真・詳細地図あり
・歩行距離=21.6km
・歩行時間=9時間4分
・高低差=293m
・累積上り/下り=375m/529m

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

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