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米国サイバー軍の格上げはトランプ大統領の心変わりを示すのか
日本のサイバー防衛隊
日本の自衛隊のサイバー防衛隊は、権限、能力、規模のいずれにおいても米国サイバー軍には及ばない。その名の通り、「防衛」を主眼としたものであり、サイバー軍のように積極的に攻撃手法を追求しているわけではない。無論、攻撃と防衛は表裏一体であり、攻撃手法の研究はむしろ行うべきだろう。自衛権の一環としてサイバー攻撃の発信源を特定することができれば、それを止めることも可能である。
その重要性が認識されるに当たって、サイバー防衛隊も規模が拡充されることになった。現在は110名程度と見られているが、共同通信の報道によれば、1000名規模を目指すという。
自衛隊の場合は、米軍の統合軍のような規模(統合軍で最大の太平洋軍は30万人を超える)の恒常的な統合部隊は存在しない。必要に応じて統合運用を行う統合任務部隊が編成されることになっている。サイバー防衛隊は、統合幕僚監部の下の自衛隊指揮通信システム隊のさらにその下にある。この自衛隊指揮通信システム隊は、初の常設の統合部隊として設置されたが、米国のサイバー軍とはかなり立て付けが異なる。それでも、自衛隊全体を見渡す位置にあることは重要である。
トランプ政権のごたごたが収まるのが先か、あるいは、大きなサイバー攻撃が起きるのが先か。日本では2020年の東京オリンピック・パラリンピックが一つの目標となって整備が進められている。
サイバーセキュリティの重要性を認めたトランプ大統領
サイバー軍昇格に当たってのトランプ大統領の声明は、「サイバースペースの脅威に対する我々のさらに高い決意を示し、我々の同盟国とパートナーを安心させ、敵を抑止するのに役立つだろう」と述べている。そして、サイバースペース作戦の重要性に見合った権限を持つ一人の司令官の下にサイバースペース作戦を集約することで、素早い対応が必要な作戦の指揮統制を能率化することになるともいう。サイバー軍司令官とNSA長官の兼任については、国防長官が検討し、いずれ大統領に提言するという。最後に、サイバー軍を通じて志を同じくする同盟国やパートナー国と連携しながら、サイバースペースの挑戦に取り組むとも述べている。日本にもいずれ影響が及ぶだろう。
サイバー軍の昇格は、米軍がサイバーセキュリティを深刻に受け止めている証左に他ならない。大統領選挙でのサイバー攻撃問題を認めたがらなかったトランプ大統領がこれを承認した意味は大きい。
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