「4人目が生まれたら、所得税ゼロ」──丁寧に議論すれば、日本でも実現できる?
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<イーロン・マスクは少子化と日本滅亡をしつこくツイートするが、無視していい。しかし少子化がさらに深刻化するのは間違いなく、大事な議論をしっかりすべき>
ネット上で炎上を起こす人を英語で「トロール」と言うけれど、世界最大のトロールといえる人の1人は、ツイッターのCEOイーロン・マスク。そして彼はどうも、ネット上で日本をつつくのが好き。
昨年5月の「出生率が死亡率より高くなるような変化がない限り、いずれ日本は消滅するだろう」という発言に続き、この3月上旬にも「日本では昨年、生まれた数の2倍の人が亡くなった」とまたツイッターで呟いている。まあ、これはちょっと変な話だ。
世界中どこでも出生率の低下が深刻な話題になっている。人口1000人当たりの出生率は、CIAのワールドファクトブックによれば、EU加盟国であるギリシャ(7.52)、スペイン(7.12)、イタリア(7)は特に低く、日本(6.9)とそう差はない。
ちなみに、韓国は6.95で日本とほぼ同じ。でもなぜか、マスクはこういう国が消えてなくなるなんて名を挙げてツイートしない。
ネット空間で炎上を起こそうとする者への対抗策として「Donʼt feed the troll(トロールにえさを与えるな)」という有名な言葉がある。
この場合、「えさ」とは彼らが何よりも欲しがっている「注目」のこと。荒らし屋に反論したり、荒らすのを止めるようお願いしたりせず、「トロールにえさを与えるな」はむしろ、一切無視する、という考え方だ。
マスクが3月に再び日本の少子化問題についてツイートした理由は、たぶん無視をされていないからだ。昨年5月のツイートは多数のメディアに取り上げられた上、9.9万の「いいね」を獲得し、1.7万回リツイートされている。かなり注目を浴びた、といったところだ。
岸田文雄首相は年頭に「異次元の少子化対策」を掲げ、3月17日には育児休暇の取得促進や若者の所得向上などの基本方針を明らかにした。月内に対策のたたき台をまとめるとされており、その詳細はコラム執筆時点でまだ定かではない。
ただ、いずれその対策について国民に説明することになる際には、「日本消滅(を防ぐためにも)」といったようなキーワードはぜひとも避けてほしい。マスクのつぶやきに注目しているような信号を発信する必要はないし、第一、「日本消滅」は起こり得ないからだ。