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トランプの宇宙政策大統領令と国際宇宙探査フォーラム
復活した国家宇宙評議会議長 ペンス副大統領 2017年10月 Jonathan Ernst-REUTERS
<民間企業SpaceXの見事な有言実行のいっぽうで、グダグダなアメリカ政府の宇宙戦略。日本はただアメリカの戦略に乗るしかないという状況でいいのか...>
3月3日に東京港区のセレスティンホテルで開催された第二回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)に45ヶ国が参加し(前回の37ヶ国よりも8ヶ国増加)、共同声明を採択して閉幕した。
45ヶ国が一日だけの会議で議論をして共同声明の内容を深めるというよりは、ISEF2の開催までに声明の文言が調整され、各国の立場を発表しつつ、舞台裏で最終的なとりまとめが行われるというタイプの国際会議であった。ただ、共同声明の採択に至るまで開催国である日本は内閣府、文科省、外務省、経産省、JAXAが連携し、議題設定から声明文の最終調整まで中心的な役割を果たした。
そうした日本の努力は特筆すべきだろうが、この会議の意義や声明文のもつ国際政治的な重要性という点で見ると、「宇宙探査」と名付けられていても、かつてのアポロ計画のようにワクワクするものでも、各国が血眼になって月や火星に宇宙飛行士を送るといった熱気もなく、米ソ宇宙競争のようなピリピリした政治的な重みも感じさせないものであった。
2017年末にはトランプ大統領が最初の宇宙政策大統領令(Space Policy Directive 1: SPD-1)が発表され、中国とロシアが月探査で協力する協定に調印するなど、国際政治的に見れば宇宙競争の再来のように見える動きがあるにもかかわらず、かつてのようなワクワク感も熱気も重みもないのはなぜなのだろうか。
トランプ政権の宇宙政策
「アメリカ第一」を掲げ、かつてのアメリカの繁栄を取り戻し、国際社会における栄光を再び得ることを目指すトランプ政権にとって、宇宙政策は格好のテーマであろう。
オバマ政権時代にスペースシャトル計画を終了させ、アメリカは国際宇宙ステーション(ISS)にアメリカの宇宙飛行士を輸送する手段を失い、ロシアに宇宙飛行士の輸送を依存することとなった。オバマ時代に民間企業に有人宇宙輸送事業をアウトソースすべく、複数の企業を競争させ、最終的にイロン・マスク率いるSpaceXとボーイングが受注することになったが、その安全性に懸念があるとして、2017年には民間有人輸送が始まっているはずなのに、現時点に至るまでそれは実現していない。こうした屈辱的な状況を変えることは、アンチ・オバマで支持者を引きつけてきたトランプ大統領としても見過ごすことはできない。
そこでトランプ大統領は、ペンス副大統領を議長とする国家宇宙評議会(National Space Council: NSpC)を復活させ、ホワイトハウス主導で宇宙政策を進める体制を整えた。これは、NASAや国防総省、国家海洋大気局(NOAA)、連邦航空局(FAA)などに縦割り行政となっている宇宙政策を統括し、技術主導ではなく政治主導の宇宙政策を展開する布石であった。このNSpCの事務局長に就任したのは元NASAの幹部でジョージワシントン大学の宇宙政策研究所所長であった宇宙政策のベテランであるスコット・ペースであり、この人事もNSpCの期待を高めた。
しかし、ホワイトハウス主導の宇宙政策は、現在に至るまで大きな成果を出しているとは言えない。NSpCは第一回目の公開会議で、トランプ政権の最優先課題は月にアメリカの宇宙飛行士を再び送ることだとし、2017年12月11日に宇宙政策大統領令(SPD-1)を発表したが、その内容は2010年にオバマ政権が策定した国家宇宙政策のごく一部、正確には一段落を変更するだけであった。
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