群馬県桐生市の生活保護世帯が過去10年で約半減している

桐生市の生活保護世帯数の推移は全国とも群馬県とも大きく乖離している beauty-box/photoAC
<母子世帯の受給件数の減少率は著しく、申請者を委縮させる「水際作戦」という指摘も>
物価高が国民の生活を脅かすようになって久しい。1日2食、いや1食しかとれない、酷暑であってもエアコンをつけられない......。こういう悲惨な声も、ちらほら聞こえてくる。
だが国民には、健康で文化的な最低限の生活を営む「生存権」が保障されているのであって、そこまでの困窮生活を強いられているとしたら、生活保護を使うのも視野に入れるべきだ。コロナ禍以降、政府も「生活に困ったら、生活保護の利用を検討してほしい」と呼びかけている。
生活保護申請件数はここ数年増加しており、2024年は25万5897件。同年の生活保護開始世帯数は22万6201件(厚労省『被保護者調査』)。後者を前者で割ると88.4%で、案外、申請は通りやすいように見える。しかし、申請に至る前の段階でかなりはねつけられている可能性がある。いわゆる「水際作戦」だ。
群馬県の桐生市では、暴力団対応経験のある元刑事を窓口に座らせているという(「生活保護相談員に『暴力団対応経験者を』桐生市、県警に紹介依頼」毎日新聞、2025年2月17日)。不正受給を防ぐためとあるが、市民団体からは「生活保護申請者を委縮させる水際作戦」と指摘されている。
そういう疑いをかけられても仕方ない、と思えるような統計がある。<図1>は、2012年度から22年度までの生活保護受給世帯数の推移だ。
全国、群馬県、および桐生市の推移を掲げている。値の水準が異なるので、2012年度を100とした指数にしているが、桐生市の特異性が一目瞭然だ。全国は微増、群馬県では増加なのに対し、桐生市は急な右下がりになっている。同市では、生活保護を受けている世帯がこの10年間でほぼ半減した。
不正受給の一掃と言えば聞こえはいいが、全国や群馬県の傾向とあまりに違い過ぎている。群馬県内の他のエリアと比べても、この減少率は異常だ。コロナ禍や物価高で、困り果てている人が増えているのは同じはずだ。「生活保護申請者を委縮させる水際作戦」で、生活困窮者に公的扶助が行き届かなくなっている可能性がある。