世界初のプロフェッショナル・プログラマーは女性だった...コンピューター開発史に埋もれた先駆者たちを描いて
さて、この女性たちが採用された頃、コンピューターという言葉は、「計算する人間」(human computer:計算手)を指していた。彼女たちは、当時大学院で微分方程式を扱える学生しかできなかった計算を行うために、採用されていた。当時の、フィラデルフィアは全米で最も大学が集まる場所であり、このような人材を集めるのに格好な場所であった。
彼女たちは数学と論理を扱う素養に加え、出身国や人種、宗教、性別を問わず創造性を評価するフィラデルフィアやプリンストンの文化を背景に、テクノロジーの可能性を引き出す協調的な仕事を通じて、機械を利用する人たちの多様な関心に対する柔軟な理解を身に付け、計算手から職業的なプログラマーへと成長していったのである。
彼ら(ENIACの開発者)は「固定観念にとらわれない」発想ができ、粘り強く働く人なら誰でも雇い、養成し、教育し、耳を傾け、発明を後押しした。そのなかには、女性も男性も、移民も、さまざまな宗教や人種の人たちも含まれていた。(293ページ)
このような過程を通じて、現代的なプログラミングという職業が誕生した。何かの問題に取り組む人々と、それを解く助けとなるコンピューターとの間を橋渡しするグループである。この6人の女性たちは、現代的なコンピューターにおける最初の職業プログラマーとなったのである。(241ページ)
STEM分野は最良の才能が生かされる分野のひとつであり、そういう場所でこそ多様性が生かされ、イノベーションが生まれやすい。
今は存在しない新たな職業が生み出される
クレイマンは、テクノロジーや女性のエンパワーメントに興味を持つ人だけでなく、テクノロジーと研究開発に未来を感じる若い世代や、その世代を応援したい人々に、本書を届けたいと願っている。
クレイマンは読者にこう呼びかける。「娘や息子に、STEMの分野でキャリアを積むことを勧めてほしい。プログラミングのパイオニアたちの語られることのなかった物語を伝えるためにも、そしてすべての人にSTEMへのキャリアの扉を開くためにも、地球規模で協力し合うことが必要だ」
現代的なコンピューターを最初に開発した人も、プログラミングした人も20歳台が中心だった。これからSTEMの道に進む人々の手によって、画期的なテクノロジーを使いこなした経験が形式知化され、新たな職業が生みだされることで、人間の可能性が広がり、歴史が作られていくのかもしれない。
『コンピューター誕生の歴史に隠れた6人の女性プログラマー――彼女たちは当時なにを思い、どんな未来を想像したのか――』
キャシー・クレイマン[著] 羽田昭裕[訳]
共立出版[刊]
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