日本の家庭や学校・職場で性犯罪が隠蔽される理由
家庭の性犯罪は顕在化しないケースも多い himwariin/photoAC
<家庭内の性犯罪は生活の破綻を恐れて被害者が訴え出ないことが多く、警察も被害届の受理を渋りがち>
2022年12月20日の弁護士ドットコムニュースに、「娘への強制性交、罪に問われた夫に『処罰は望みません』法廷で妻が語った驚きの理由」という記事が出ている。実の娘に強制性交等をした夫の裁判で、妻が次のように訴えたという。
「夫がしたことは許せないが、家のローンが今年6月から始まり経済的にも大変なので、してしまったことは反省して、父親として夫として経済的に支えていってほしい。刑事処罰は望みません」。
本件は事件化されたケースだが、「お父さんが捕まったら生活できなくなる」と警察に通報すらしない家庭もあるだろう。家庭という牢獄に閉じ込められたまま、生き地獄のような日々を送っている子どももいるはずだ。
警察庁の統計によると、2020年に警察が検挙した強制性交等事件は1278件で、このうち加害者が家族・親戚のものは197件(15.4%)。これが現実を反映しているかは、被害経験者の申告と対比してみると分かる。<図1>を見てほしい。
加害者が家族・親戚である事件の割合は、警察統計では15.4%でしかないが、被害経験者の申告では24.0%となっている。犯罪の中でも性犯罪は発覚しにくいのだが、とりわけ家族の犯行は闇に葬られやすいようだ。
生活の破綻を恐れ、被害者が被害を訴え出ないことが大きい。警察にしても、家庭という私空間には物証が残りにくかったり、「家族がそんな鬼畜なことをするはずがない」といった思い込みがあったりして、被害届の受理を渋りがちだ。民事不介入と私事不介入を混同している警察官もいる。