「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策
OPPORTUNIST SUPREME
かつて大型のプロジェクトを止めて喝采を浴びた小池はどこへやら、再選以降、巨額の鉄道整備を矢継ぎ早に動かしている。
地元にとってインフラは、あれば便利に決まっている。だが、いくら企業と人が集中する東京都とはいえ、人口は30年以降は減少に転じるのだ。費用対効果はどうなのか、剛腕政治家の「政治路線」が紛れていないか。小池都政にこうしたチェックの声はほぼ聞かれなくなった。
改革どころか、東京の豊かな税源を私物化してばらまく、金満知事になってはいまいか。
小池人事の恐ろしさ
都政の8年を通じて小池は、権力維持のためなら臨機応変に姿を変える、機会主義者(オポチュニスト)の色彩を濃くしてきた。保守色の濃い強烈なポピュリストの人物像に引きずられ、その本質は見逃されがちだ。
小池にいかなる変質があっても、支えてきたのは3万人余りの都庁官僚組織である。都庁官僚も霞が関官僚と同じく、論理とデータによる客観性を重んじ、知事が間違えば正しいと信じることを進言する気風があった。だが、それは過去の話だ。
コロナ第1波の20年7月、その担当幹部である内藤淳福祉保健局長を交代させる人事が「更迭か」と都庁内で波紋を呼んだ。真相は分からないが、ある局長経験者はこう語る。
「内藤さんは以前から自分の思うところを率直に述べる人で、だからこそ都庁では上にも下にも信頼されてきた。でも小池さんは率直に諫言する役人を嫌うんです。それを知ってか知らずか、知事お気に入りの副知事が、彼を外して彼の部下と一緒に知事に決裁を取るので、内藤さんは仕事がしづらくなって身を退(ひ)いた」
別のOBはこう補った。
「小池さんは人事に好みを積極的に言う人です。しかも副知事や局長ならまだしも、課長級までも」
任期中の首長は行政を任されている以上、人事を通じて施策を実現することは当然でもある。石原都政でも、知事の意に沿わない幹部を異動させることはしばしばあった。だが、小池人事の苛烈さは石原のそれをしのぐ、と前出のOBが続ける。
「石原さんの場合、気に食わない幹部が目の前から消えればそれで終わり。知事とソリが合わなくても一生懸命にやっている職員というのはいますから、組織内で知恵を働かせて〈知事から遠いが良いポスト〉に就けた。そうでもしないと、物言わぬ職員ばかりになりますから。ところが小池さんの場合は、〈ちゃんと降格になってるの?〉とばかりに異動先がどこかまで追いかけて確認してくるんで、そういうことができなくなったのです」