「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策

OPPORTUNIST SUPREME

2024年7月5日(金)17時18分
広野真嗣(ノンフィクション作家)

newsweekjp_20240704050235.jpg

2017年、都民ファ候補者の応援演説 RICHARD ATRERO DE GUZMANーNURPHOTO/GETTY IMAGES

かつて大型のプロジェクトを止めて喝采を浴びた小池はどこへやら、再選以降、巨額の鉄道整備を矢継ぎ早に動かしている。

地元にとってインフラは、あれば便利に決まっている。だが、いくら企業と人が集中する東京都とはいえ、人口は30年以降は減少に転じるのだ。費用対効果はどうなのか、剛腕政治家の「政治路線」が紛れていないか。小池都政にこうしたチェックの声はほぼ聞かれなくなった。


改革どころか、東京の豊かな税源を私物化してばらまく、金満知事になってはいまいか。

小池人事の恐ろしさ

都政の8年を通じて小池は、権力維持のためなら臨機応変に姿を変える、機会主義者(オポチュニスト)の色彩を濃くしてきた。保守色の濃い強烈なポピュリストの人物像に引きずられ、その本質は見逃されがちだ。

小池にいかなる変質があっても、支えてきたのは3万人余りの都庁官僚組織である。都庁官僚も霞が関官僚と同じく、論理とデータによる客観性を重んじ、知事が間違えば正しいと信じることを進言する気風があった。だが、それは過去の話だ。

コロナ第1波の20年7月、その担当幹部である内藤淳福祉保健局長を交代させる人事が「更迭か」と都庁内で波紋を呼んだ。真相は分からないが、ある局長経験者はこう語る。

「内藤さんは以前から自分の思うところを率直に述べる人で、だからこそ都庁では上にも下にも信頼されてきた。でも小池さんは率直に諫言する役人を嫌うんです。それを知ってか知らずか、知事お気に入りの副知事が、彼を外して彼の部下と一緒に知事に決裁を取るので、内藤さんは仕事がしづらくなって身を退(ひ)いた」

別のOBはこう補った。

「小池さんは人事に好みを積極的に言う人です。しかも副知事や局長ならまだしも、課長級までも」

任期中の首長は行政を任されている以上、人事を通じて施策を実現することは当然でもある。石原都政でも、知事の意に沿わない幹部を異動させることはしばしばあった。だが、小池人事の苛烈さは石原のそれをしのぐ、と前出のOBが続ける。

「石原さんの場合、気に食わない幹部が目の前から消えればそれで終わり。知事とソリが合わなくても一生懸命にやっている職員というのはいますから、組織内で知恵を働かせて〈知事から遠いが良いポスト〉に就けた。そうでもしないと、物言わぬ職員ばかりになりますから。ところが小池さんの場合は、〈ちゃんと降格になってるの?〉とばかりに異動先がどこかまで追いかけて確認してくるんで、そういうことができなくなったのです」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中