「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策

OPPORTUNIST SUPREME

2024年7月5日(金)17時18分
広野真嗣(ノンフィクション作家)

かつて小池の最側近として豊洲移転の見直し・築地再整備プランを打ち立て、小池に代わって市場の現場や都職員と対峙した小島に対しても、小池は当初は愛嬌を振りまいたはずだ。だが小池は次第に距離を取り、豊洲移転の本格実施に舵を切る。

17年9月には小島は特別顧問を退き、都民ファの政務調査会事務総長に就いたが、翌月には希望の党が総選挙で大敗。小池がかつて小島と一緒ににらみつけていた都庁幹部たちを頼り始めるのは、その頃からだった。

小島の目に「かつての小池の魅力」は今、どう映っているのか(取材依頼に対し、返答はなかった)。


「古い都議会にいじめられている」という演出から始まった小池都政は、公明党に頼り、次に自民党におもねって、ついに安定した権力を獲得したかに見える。

だが、そのために決めてきた椀飯(おうばん)振る舞いの帳尻は本当に合っているのか。思い付きで繰り出した政策は、持続可能なのか──。

都庁組織は疲弊し、もはや正しいことを具申し、いさめる官僚の存在感は失われつつある。健全な緊張関係を失った行政が腐るのに時間はかからない。機会主義者であることによって獲得してきた権力の拡大は、早晩限界を迎える可能性がある。

仮に3度目の当選がかなったら、権力の階段を上ってきた小池百合子の物語は最終章に入る。

今回の3選出馬は、国政に転じてポスト岸田に名乗りを上げるという、別の筋書きを放棄する選択だった。実際、15区補選に小池出馬の可能性も取り沙汰されていた。

はっきりしたのは今年2月半ば、小池は乙武に「チャレンジする意思はありますか」と聞いた瞬間ということになるが、その少し前の2月2日、小池は官邸に岸田を訪ね、30分間も話している。

官邸スタッフは「都の予算のアピールをしていましたよ。わざわざ何をしに来たのかなと思った」と語る。岸田の目をのぞき込んだ小池は、そこで何かを見極めたのだろうか。

遠からず総選挙は行われるが、今後、小池がそこに出るには知事辞職が前提になり、「投げ出し」批判は免れない。守りの政治の蜜の味を知った彼女にそんな選択ができるとは、私には思えない。

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-独総選挙で第1党の保守連合、連立協議を迅速に

ワールド

ウクライナ侵攻3年、支援に感謝とゼレンスキー氏 状

ワールド

容体危機的のローマ教皇、「良い夜を過ごした」と教皇

ワールド

ロシア、長期的なウクライナ和平望むと表明 米の早期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 8
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 7
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中