「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策
OPPORTUNIST SUPREME
「のり弁」やめますの嘘
私たちは、人事を通じた過度な官庁支配が、信じ難いスキャンダルを生んだ前例を知っている。財務省近畿財務局が国有地を相場の10分の1で払い下げた森友学園問題だ。
この問題で財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は「記録は残っていない」と嘘をつき、その答弁に合わせて学園側との交渉記録の存在を否定したり、記録の改ざんを行った。
内閣人事局を通じた人事権行使をやりまくったために、官僚が萎縮したばかりか、平気で国益に反する行動を取るようになったのだ。小池都政も、もはやその領域に突入している可能性がある、と私は危惧する。
都民ファ最初の都議選の公約は、情報公開の「のり弁(黒塗り)をやめます」だった。
だがその投開票日の3日後、豊洲市場への移転延期で支払われた移転補償金にまつわる公開請求で、私はほぼ全て黒塗りの文書を受け取った。豊洲移転を延期しただけ無駄だったと受け取られる、と職員が忖度したのだろうか。
6年後の23年3月には、そんな疑念がより深刻になった。
知事と自民党の間で重要な役割を果たしてきた前出の元江東区長、山﨑孝明親子による、都立ゴルフ場の利用回数を記録した文書を公開請求したが、「存在しない」と明記した非開示決定が2カ月後に届いた。
私は既に、庁内で回覧され小池も見た資料の一部を入手しており、この決定通知は嘘である。
小池劇場の終わりの始まり
冒頭のインタビューで乙武は、小池と都民ファ都議の関係について、「これも良い意味で意外なんですが、小池さんって人望があるんです。〈頼られている〉じゃなくて、好かれているんです」と語っていた。
ごますりで言っているのではない。私は現職の都庁幹部からも、「小池知事って魅力的な人」というセリフを聞いた。小池は、距離を縮めた者には惜しむことなくその愛嬌を振りまき、その相手をとりこにする魅力があるようだ。
想像をたくましくすれば、とりこになった者は「小池を独占したい」という欲に駆られるだろう。都知事という絶対的な権力者が相手なら余計に狂おしい。だが当の小池は次々と「頼れる誰か」を取り換える。取り換えた誰かと取り換えられた誰かが敵同士なら、後者は苦しむはずだ。
そこまで考えてハッとしたのは、小池の学歴詐称疑惑の真相を暴露した「元側近の爆弾告発」と題した手記を4月に文藝春秋5月号に発表した弁護士の小島敏郎のことだ。小島は6月18日、小池を公職選挙法違反の疑いで刑事告発した。