「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策
OPPORTUNIST SUPREME
その後は鳴りを潜めたが、コロナ禍を経て、仇敵・自民党都連会長の萩生田光一に頼られるほどの存在感を放ちつつ、知事3選をうかがう位置にいる。この小池の力の源泉は何なのか。今、どんな新しい価値を取り込もうとしているのか。そして、足場とする都庁で何が起きているのだろうか。
トランプそっくり
小池の発信には独特のスタイルがある。「ブラックボックス」や「チルドレンファースト」など、横文字交じりのもっともらしい言葉選びで人々の意表を突き、時に「人民の敵はあいつだ」とばかりに敵を名指しして喝采を浴びようとする。
2期目の任期中、都民の健康や生命を脅かす新型コロナの現場指揮官としてすら、そうだった。
例えば初期最大の危機だった21年正月早々、小池が、埼玉、神奈川、千葉の3県知事と連れ立って内閣府にコロナ対策担当相の西村康稔を訪ねた「事件」をご記憶だろうか。やおら緊急事態宣言の発出を求め、拒む政府を押し切って新年のお茶の間をアッと言わせた。
ただ本来、追及を受ける立場にあったのは小池だ。大みそかには都内で約1300人という過去最大の感染者数を記録し、重症者も急増して全国に不安が広がっていた。小池はその一瞬を捉えたのだが、直前まで対応を迫られていたのは小池その人だった。
さかのぼれば20年秋から感染が拡大するなか、慌てた国の専門家が11月20日、GoToトラベルの停止などを求める提言を発表。大阪府や北海道の知事は一部停止に応じたのに対し、観光客の最大の供給地である東京都の小池は無反応だった。
国民に嫌がられる対応には手を出さないのが小池流。都合が悪いと記者に質問をさせないのも常套手段だった。たまたま同じ日に行われた定例会見は実に異様で、40分ほどの枠の半分以上を、小池自身が都の事業発表を読み上げることでつぶすのだ。いずれも目の前の危機とは関係ない、資料を配れば済む話なのに。
クラブ所属の記者でもさすがにたまらずGoToをやめないのかと聞くと、小池は「国が責任を持ってやっておられると考えております。それを徹底していただきたい」。こうして対応はずるずると遅れていった。
先送りの責任が問われる窮地にあったはずが、正月に一転、動きの遅い政府を動かす救世主であるかのように登場して、攻守を切り替えることに成功。悪者は緊急事態宣言に消極的な首相の菅義偉だ、という構図に塗り替えてしまった。