「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策

OPPORTUNIST SUPREME

2024年7月5日(金)17時18分
広野真嗣(ノンフィクション作家)

newsweekjp_20240704050343.jpg

豊洲市場への移転は迷走しつつも実現 KIYOSHI OTAーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

自ら特別顧問として率いた都民ファでは過半数に届かず、復権していく自民党都連との関係修復もままならない。だからその都度、権力固めに協力してくれる「誰か」を求め、その誰かを取り込むため、彼らが望む政策を丸のみしてきた。

ここで3つの政策を示したい。

第1の政策は、初期の小池都政が力を入れ、18年に成立させた都受動喫煙防止条例だ。条例が施行されたのは20年4月。飲食店でも従業員を雇っていれば原則禁煙という、国の法律に上乗せした規制だ。小池とタッグを組んでこれを強力に推進したのは、2万人の医師が加盟する都医師会(尾崎治夫会長)だった。


開業医の利益団体である医師会は伝統的に自民党に近い。だが、小池の都民ファが議会で多数を握れるか否か最初の分水嶺だった17年の都議選に際し、いまだ自民党につくか小池につくかと各種の業界団体が戸惑うなか、いち早く小池支持に回った。

「借り」ができた相手には無理を言えないのだ、と感じたのは後のコロナ禍だ。小池は、都医師会と対峙することには消極的だった。

21年7月の第5波では再び医療崩壊が起き、病床確保に協力しない民間病院に対して都民から怨嗟の声が上がった。改正感染症法では、知事は病院に病床確保の協力要請ができた。正当な理由なく拒めば、勧告し、従わなければ医療機関名を公表する制裁措置もできた。

ところが、あれだけ世論に敏感な小池なのに、協力要請を出したのは感染の勢いが鈍化し始めた8月23日になってから。悪目立ちしないよう、わざわざ厚労省に赴き、「都は国と一緒に要請した」という形を取った。

その日のぶら下がり会見はわずか12分間で、医師の「コロナ診療をやらない自由」と戦うポーズは取らなかった。かつて小池は都議と都庁の「なれ合い」を批判したが、小池は自らの権力を支える勢力とはなれ合っていた。

「わが世の春」の公明党

第2の政策は、小池が2期目の「レガシー」に掲げる、「高校授業料完全無償化」だ。

小池都政2年目の17年、国の制度に先行する形で世帯年収760万円未満を対象に私立高の無償化をスタートさせ、20年に910万円未満まで枠を拡大。今年4月に全ての所得制限を撤廃している。

この政策は、もとは都議会公明党の主張だ。これを丸のみすることに都庁内では反対論が強かったが、小池が押し切った。

16年の知事選は自民党と共に敵対候補を支援した公明党だが、その年の12月に自民党と「連立解消」を宣言し、「小池都政とは是々非々」という立場を鮮明にする。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏がイラン大統領と電話会談、地域の緊張緩和

ビジネス

インド規制当局、取引決済の新方式提案 海外投資家の

ワールド

中国とカナダ、関税引き下げで合意 戦略的協力推進へ

ビジネス

インド、防衛企業への外資導入促進に向け規制緩和を計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑について野次られ「中指を立てる」!
  • 2
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 5
    イランの体制転換は秒読み? イラン国民が「打倒ハ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 8
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中