最新記事
新たな超大国

「インドで2030年、奇跡の成長が始まる」モディが体現する技術革新と伝統の両立への道

MODI’S MOMENT

2024年5月16日(木)17時09分
ダニシュ・マンズール・バット(本誌アジア地域編集ディレクター)

newsweekjp_20240516025931.jpg

モディの一声で環境に優しい電動バスが首都に500台導入された ARVIND YADAVーHINDUSTAN TIMES/GETTY IMAGES

モディのメッセージ発信戦略はうまく機能している。3月に調査会社イプソスが発表した調査によれば、インドの都市部に住む消費者は、対象となった29カ国中で最も自国の経済の現状と先行きを楽観視している。

インド人が自国経済の将来を楽観したくなるのも無理はない。

歴史的にアジア経済の奇跡的な成功は、生産年齢人口に対する従属人口(高齢者や子供)の割合が最小のときに起きた。日本の場合は1964年、中国は94年だ。インドは既に現時点で世界第5位の経済大国だが、奇跡的な成長が起きるのは2030年以降で、しかもそれが25年間は続くと予想されている。

米タフツ大学フレッチャースクールのバスカル・チャクラボルティ教授(グローバルビジネス)は、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された論文で、インドは政府観光局のキャンペーン「インクレディブル・インディア(驚くべき国、インド)」をもじって、「インエビタブル・インディア(未来を約束された国、インド)」を世界に向けた宣伝文句にするべきだとしている。

「モディのブレーンたちがモディのことを、インドの未来に不可欠の人物のように見せている」と、チャクラボルティは指摘する。

だが、インド経済の急成長を約束するのは人口動態だけではない。この10年、モディ政権は道路や港湾やデジタル通信網などのインフラを驚くべきスピードで整備してきた。

かつての穴ぼこだらけの道路や、崩れかけた空港ターミナルビル、そして聖なる牛を優先するための大渋滞も今は昔。現在のインドは多くの面で世界トップレベルの国になった。

インドの港湾はアメリカやシンガポールよりも効率的で、船舶が到着してから荷降ろしをして出港するまでに要する時間は24時間以内だ。中国とイギリスに次ぎ世界第3位の地下鉄網も完成間近となっている。

電子送金システム「統合決済インターフェース(UPI)」には、3億人ものユーザーがいる。生産能力もモディの在任期間中に急拡大した。

米証券大手ゴールドマン・サックスは、向こう50年間にインド経済の爆発的成長を予測する。それによると、2075年までにアメリカの経済は現在の2倍に、中国は約3倍に拡大する見通しだが、インドは15倍も拡大する可能性があるという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中