最新記事
新たな超大国

「インドで2030年、奇跡の成長が始まる」モディが体現する技術革新と伝統の両立への道

MODI’S MOMENT

2024年5月16日(木)17時09分
ダニシュ・マンズール・バット(本誌アジア地域編集ディレクター)

newsweekjp_20240516030007.jpg

執務中のモディ PMO INDIA

国民に与えた革命的「衝撃」

アメリカ政府はインドを、途上国世界における中国一強を阻む重要なバランサーと見なしている。世界に広がる印僑は、シリコンバレーにおける一大勢力となってアメリカのIT産業を動かしている。

2075年までに、インドはアメリカを抜いて中国に次ぐ世界第2位の経済大国になるとみられている。これは、インドが世界最大の(それも突出した)二酸化炭素(CO2)排出国になる可能性があり、インドの選択が、地球と生物の未来を大きく左右するということだ。

90分間の独占インタビューと書簡において、モディはそうした問題について語るとともに、インドの未来について楽観的な見方を示した。「後ろ向きな考えは長持ちしないと思う」と彼は述べた。

「一方で、前向きな見方には永続性がある」と、彼は言う。

そんな前向きなパワーをたっぷり注いでいるのが、月に1回、出演している国営ラジオの番組『マン・キ・バート(心からの会話)』だ。毎回、2億3000万人が聞いているとされ、一般市民に対し、モディを身近に感じさせるとともに、生活におけるさまざまな変化に彼が何らかの役割を果たしたことを印象付けている。

さて欧米から見ると、モディの国民に対するこうしたメッセージ戦術は劇場型政治とも、一個人の「神話」づくりのための公費の無駄遣いとも受け取られるかもしれない。

だがそれでは、こうした戦術がインドという階級社会に住む人々に与えた革命的と言うべき衝撃を理解できない。

この階級社会は、カースト制とかつての植民地統治、そしてネール家とガンジー家による政治支配の中で形作られてきたものだ(総選挙では、ネールの曽孫で最大野党・国民会議派を率いるラフル・ガンジーがモディに戦いを挑んでいる)。

国民とのコミュニケーションは常に双方向的に行っているとモディは言う。「指導者には草の根の人々とつながり、フィルターなしの意見や反応を得る力が必要だ」と彼は言う。

モディは比較的貧しい家庭に育った。BJPの支持母体であるヒンドゥー至上主義組織「民族義勇団(RSS)」の活動で各地を回り、インドにある806の行政区域の80%で少なくとも1泊はしたと語る。

「だから私はほとんど全土に直接的な人脈がある。おかげで直接、反応や意見を聞くことができる」と彼は言う。グジャラート州の首相だったときには、かつて旅先で出会った男性が、夜中の3時に鉄道事故が起きたと電話で知らせてきたこともある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年

ワールド

ハセット氏、FRBの独立性強調 「大統領に近い」批

ビジネス

米企業在庫9月は0.2%増、予想を小幅上回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中