「インドで2030年、奇跡の成長が始まる」モディが体現する技術革新と伝統の両立への道
MODI’S MOMENT
国民に与えた革命的「衝撃」
アメリカ政府はインドを、途上国世界における中国一強を阻む重要なバランサーと見なしている。世界に広がる印僑は、シリコンバレーにおける一大勢力となってアメリカのIT産業を動かしている。
2075年までに、インドはアメリカを抜いて中国に次ぐ世界第2位の経済大国になるとみられている。これは、インドが世界最大の(それも突出した)二酸化炭素(CO2)排出国になる可能性があり、インドの選択が、地球と生物の未来を大きく左右するということだ。
90分間の独占インタビューと書簡において、モディはそうした問題について語るとともに、インドの未来について楽観的な見方を示した。「後ろ向きな考えは長持ちしないと思う」と彼は述べた。
「一方で、前向きな見方には永続性がある」と、彼は言う。
そんな前向きなパワーをたっぷり注いでいるのが、月に1回、出演している国営ラジオの番組『マン・キ・バート(心からの会話)』だ。毎回、2億3000万人が聞いているとされ、一般市民に対し、モディを身近に感じさせるとともに、生活におけるさまざまな変化に彼が何らかの役割を果たしたことを印象付けている。
さて欧米から見ると、モディの国民に対するこうしたメッセージ戦術は劇場型政治とも、一個人の「神話」づくりのための公費の無駄遣いとも受け取られるかもしれない。
だがそれでは、こうした戦術がインドという階級社会に住む人々に与えた革命的と言うべき衝撃を理解できない。
この階級社会は、カースト制とかつての植民地統治、そしてネール家とガンジー家による政治支配の中で形作られてきたものだ(総選挙では、ネールの曽孫で最大野党・国民会議派を率いるラフル・ガンジーがモディに戦いを挑んでいる)。
国民とのコミュニケーションは常に双方向的に行っているとモディは言う。「指導者には草の根の人々とつながり、フィルターなしの意見や反応を得る力が必要だ」と彼は言う。
モディは比較的貧しい家庭に育った。BJPの支持母体であるヒンドゥー至上主義組織「民族義勇団(RSS)」の活動で各地を回り、インドにある806の行政区域の80%で少なくとも1泊はしたと語る。
「だから私はほとんど全土に直接的な人脈がある。おかげで直接、反応や意見を聞くことができる」と彼は言う。グジャラート州の首相だったときには、かつて旅先で出会った男性が、夜中の3時に鉄道事故が起きたと電話で知らせてきたこともある。