ダイアナ死去で犯した間違い、好きだった英首相・米大統領... 元BBC記者が書くエリザベス女王の96年
A QUEEN FOR THE AGES
ウィリアムとヘンリーの両王子、その父チャールズと共にバルモラル城で休暇を過ごしていた女王は、世間の悲しみに同調しようとせず、半旗の掲揚も命じなかった。
幼い王子たちを世間の目から遠ざけたかったのだろうと言われている。だが多くの批判と政府からの圧力を受けて、ついに女王はロンドンに戻り、半旗の掲揚を命じることになった。
このエピソードは、女王と王室が、階級や特権に対する考え方が劇的に変化した世界への適応に苦労したことを示す例だった。
その後、女王をはじめ王室は、より親しみやすく、庶民の感覚を取り入れようとしたが、それは簡単な道ではなかった。
王室内部で分裂が起きることもあった。女王の3人の子の結婚は、離婚という形で終わった。
なかでもチャールズとダイアナの破局では、双方がメディアを味方に付けようと策動し、世間を騒がせた。必然的に、王室の輝きは損なわれた。
追い打ちをかけたのがヘンリー王子と妻のメーガン妃だった。この夫妻は公務を捨てるだけでなく、アメリカのテレビ番組に出て内幕を赤裸々に話した。王室内で息子アーチーの肌の色の可能性を「懸念し、取り沙汰する会話」があったとも述べた。
女王の次男アンドルー王子の名が児童買春の斡旋で悪名高いジェフリー・エプスタインの顧客リストにあったことも明るみに出て、王室にはさらなるダメージがもたらされた。
チャールズ新国王への逆風
愛された女王が去り、チャールズが国王となって、さてイギリス王室はどこへ行くのか。
君主制擁護派には、史上最大級の逆風を覚悟せよとの声もある。
エリザベス2世の個人的な人気は最後まで衰えなかったが、それでも若い世代では支持率が低迷する。あの女王を愛した国民が、女王の息子を同じように愛するとは思いにくい。
君主制の大胆な改革や廃止を求める人たちは、この日を待っていたに違いない。
エリザベス2世が90歳を過ぎても淡々と公務を果たし続けている限り、声高に王室批判を叫んでも国民の共感を得られるはずがなかった。その女王が去った今は、どんな変化が起きてもおかしくない。
オーストラリアでは、英王室と縁を切ろうとする動きが復活しそうだ。元首相のマルコム・ターンブルは共和制支持者だが、エリザベス女王の存命中は英連邦からの離脱を提案しても無駄だと語っていた。