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ミャンマー

日本人ジャーナリストと同日に拘束された現地人カメラマン、その日のうちに死亡 尋問中に暴行死か

2022年8月3日(水)17時40分
大塚智彦
死亡したミャンマーのカメラマン・アイ・チョー氏

ミャンマー治安当局の家宅捜索で拘束され、その日のうちに亡くなったアイ・チョー氏 Radio Free Asiaのツイッターより

<午前2時に突然の家宅捜査で連行され、10時間後には家族に死亡通知>

ミャンマーで取材活動を続けていたカメラマンが7月30日に治安当局の家宅捜索を受け身柄を拘束された。そしてその日のうちに残された家族のもとに病院から入った連絡は衝撃的な内容だった。

「死亡したので遺体を引き取りたければ渡す」
 

家族が引き取ったカメラマンの遺体には目立った外傷はなかったものの、胸と背中に打撲痕らしいアザ、そして胸部に拘束前はなかった縫合した痕跡が残されていたことから、尋問中に受けた暴行が死につながった可能性が高く治安当局への批判が強まっている。

このカメラマンは地元中心の報道写真家の組織に属し、これまで反軍政を掲げる民主派市民のデモなどを撮影し、おもにSNSにアップするなどで情報発信をしていた。これが治安当局に知られ拘束に繋がったとみられている。

死亡したカメラマンはアイ・チョー氏(48)で中部ザガイン地方域のザガイン市内にある自宅に7月30日の午前2時ごろ、軍用車両6台が駆けつけて兵士が家族に対して「門を開けないと射撃する」と脅して自宅内に入った。

その後アイ・チョー氏を武器の不法所持容疑で拘束し、自宅内で家宅捜索を行ったと米国系メディア「ラジオ・フリーアジア(RFA)」が8月1日に伝えた。

拘束10時間後に死亡連絡

RFAによると、アイ・チョー氏が拘束された後、同日正午ごろ家族のもとに同氏が死亡し遺体はザガイン市立病院の遺体安置所にあると突然伝えられたという。

身柄拘束から約10時間後の突然の死亡連絡に家族はショックを受けたようで、同氏には命に係わる病気や既往症もないことなどから「死亡は軍兵士による過度の暴力が死因ではないか」との見方が強まっている。

家族はその後「遺体を引き取りたいと希望するか、そのまま放置するか」とザガイン市民病院関係者から問われ、「引き取る」ことを伝えたという。

アイ・チョー氏の遺体はその後市民病院から家族の要望に基づいて葬儀のため地区内にある宗教施設に地元葬儀会社によって運ばれた。

家族は7月31日にアイ・チョー氏を墓地に埋葬したと明らかにしている。

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