トランプ氏とゼレンスキー氏また衝突、クリミア巡る考えに隔たり

4月23日、トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ戦争終結に向けた取り組みを巡って再び衝突した。写真は、ロケットを発射するウクライナ軍兵士。4月19日、ドネツク地方で撮影(2025年 ロイター/Anatolii Stepanov)
[ワシントン/ロンドン/パリ 23日 ロイター] - トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は23日、ウクライナ戦争終結に向けた取り組みを巡って再び衝突した。トランプ氏はロシアのクリミア占領を認めないゼレンスキー氏を非難した。
この日はロンドンで米欧ウクライナの代表団が和平を巡る協議を実施。米国のルビオ国務長官は出席しなかった。
ゼレンスキー氏は22日、ウクライナはロシアによるクリミア占領を承認しないと改めて表明し「ここで議論すべきことは何もない。これはわが国の憲法に違反している」とした。
過去のホワイトハウスでの直接会談でゼレンスキー氏と口論したトランプ氏は、これをロシアとの和平合意の達成を困難にする扇動的な発言だと非難。クリミアは何年も前に失われたものであるとして、ソーシャルメディアに「議論の材料にもならない」と一蹴した。
ゼレンスキー氏はその後、Xへの投稿で、ロンドン会合は「感情的になる場面もあった」としつつ、今後の共同作業が平和につながることへの期待を表明。ウクライナは常に憲法を順守すると強調した上で、米国を含む西側諸国が「自らの強い決断に沿って行動する」と確信していると述べた。
また、トランプ政権1期目の国務長官であったマイク・ポンペオ氏による2018年の「クリミア宣言」を投稿に添付。そこには「米国はロシアによるクリミア併合の試みを拒否し、ウクライナの領土保全が回復するまでこの方針を維持することを約束する」と記されている。
<「ディールに非常に近付いている」とも>
トランプ氏は一方で、交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に、米国はウクライナでの殺りくを止めようとしており、和平に向けた「ディール(取引)に非常に近付いている」と投稿した。
その後、記者団に対してはロンドンでの会合は「かなりうまくいった」と思うと語り、ロシアのプーチン大統領とゼレンスキー氏を念頭に「彼らが合意すれば、すぐに殺りくは止まるだろう」と述べ、双方とディールは可能との認識を示した。
また、バンス米副大統領は、ロシアとウクライナが米国の和平案に同意するか、「米国がこのプロセスから手を引くか」のどちらかを選ぶ時だと述べ、先週のトランプ氏の警告を繰り返した。
インドで記者団に対し、この提案は領土線を「現在に近い一定のレベルで」凍結し、「長期的な平和につながることを期待する長期的な外交的解決」を求めていると説明。「殺りくを本当に止める唯一の方法は、両軍が武器を置き、この事態を凍結することだ」と語った。
米国の提案に詳しい元西側当局者によると、同案はロシアのクリミア併合を認めることも求めている。
<米特使、25日にプーチン氏と再協議>
米当局者がロイターに明らかにしたところによると、ウィットコフ中東担当特使は25日にロシアのプーチン大統領と再び協議を行う。
また、ロンドン会合後に発表された英仏独の共同声明は、全ての当事国がトランプ氏の「殺りくを止め、公正で永続的な和平を実現するというコミットメント」を改めて強く支持したと説明。「次のステップに関する共通の立場に達する上で大きな進展があった」とし、「緊密な連携を継続することで合意し、近くさらなる協議を行うことを期待する」と記した。