玉城デニー知事に聞く、沖縄の現在と未来──「オール沖縄の民意はいささかも変わらず」
OKINAWA AT A CROSSROARDS
「辺野古阻止」を掲げた故・翁長雄志前知事は命が尽きる直前まで、政府や本土の無理解と闘った。その後継として過去最多得票で当選した玉城は2019年4月の筆者のインタビューで、エネルギーの源泉は県民の民意だと語った。「巨大な政府権力と向き合えるのは草の根の民意にしっかり後押しいただいているから」だと。
今はどうだろう。
14年知事選で翁長の選対本部長を務め、18年知事選で玉城の支持母体の会長も務めた県内有力企業「金秀グループ」の呉屋守將会長は昨年9月、辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」系の候補を支持しないと表明。経済界や保守層との懸け橋だった呉屋の離脱は「オール沖縄」衰微の潮目になった。辺野古問題をめぐる国との協議が停滞するなか、今年2月にはロシアのウクライナ侵攻が始まり、国内外の安全保障環境に対する認識も大きく変わった。
「県民は長い間、選挙のたびに基地か経済かという二者択一を迫られてきた。しかし保守本流の政治家だった翁長前知事が『イデオロギーよりアイデンティティー』と唱え、辺野古への移設を認めない県民の民意を結集したのが『オール沖縄』です。私はこの民意の方向性はいささかも変わっていないと思います」
ただ、沖縄で語り継がれてきた「軍事基地は攻撃の的になる」「軍隊は住民を守らない」といった沖縄戦の教訓が、とりわけ若い世代で薄れているのも事実だ。
「ウクライナ情勢が伝えられるなか、抑止力強化や憲法改正の必要性を説く声が高まっていますが、今こそ冷静になるべきです。米軍の駐留が必要、自衛隊もミサイルを配備すべきだというのは有事ありきの考え方です。離島が攻撃されたら誰が住民を助けるのか、戦争の一番の犠牲になるのは誰かと問い掛けたい」
「ザル経済」の転換がカギ
玉城は「過激な反米・反基地思想」の持ち主のように刷り込まれている人も本土では少なくないが、もともと「革新」の政治家ではない。日米安保も自衛隊も肯定する立場だ。とはいえ、支持母体の「オール沖縄」が革新色を強めれば、必然的にそれに重なって映る。玉城はそうした流れを払拭するようにこう話した。
「革新という言葉は、『なんでも反対』というイメージを持たせるために使われる。だが革新と言われる側も外交や経済についてしっかり発信している。保守と革新の争いという枠組みで捉えられてしまうと、革新はガリガリに尖(とが)った鉛筆の先みたいなイメージになる。鉛筆は鉛筆でも、柔らかい5Bくらいでいい。尖らなくてもきれいな線は描けます」