バイデンは中露分断のチャンスをふいにした
Is Biden Missing a Chance to Engage China?
ホワイトハウスの公式声明によれば、サリバンと楊は、「地域の安全保障問題と核不拡散に焦点を当てた」ほか、ウクライナ戦争にも言及したという。しかし中国側からは、両者の対話は、伝えられているより厳しいものだったと示唆する声明が発表された。とりわけ、米国はバイデンの訪問を利用し、台湾問題で中国との対立姿勢を強めている、と中国側は感じているという。
楊はサリバンとの会談で、「米国側が台湾のカードにこだわり、どんどん間違った道を進めば、間違いなく危険な状況に陥る」と発言している。
ロシアのウクライナ侵攻以降、バイデン政権の中国に対するメッセージはおおむね、「プーチンのウクライナ攻撃を物質的に支援すべきではない」という警告に限定されている。そして米国の政府高官は、中国からロシアに向けた明確な軍事的・経済的支援は見られないと認めている。
ロシア科学アカデミーを率いるアレクサンダー・セルゲーエフは4月、中国はこれまでの「素晴らしい協力」をいまは控えているという不満を口にした。中国の金融サービスネットワーク銀聯(ぎんれん)も、ロシアの銀行との交渉を中断している。
だがバイデン政権から何かハイレベルの提案をしようという姿勢は見られない。それどころか、アメリカの対中政策の行方をほぼ握っているのは、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表のようだ。バイデンの東アジア歴訪にも随行している彼女は、政権発足後1年半をかけて、まだトランプが科した対中追加関税を吟味しているという。
バイデンが日本で発表したIPEFも、アジア経済を牛耳ろうとする中国に対抗するものだが、これで東アジアにおける力関係が大きく変わるのか、一部の専門家は疑問視する。もっともバイデン政権は、中国をさらに刺激しないようこの枠組みから台湾を外した。これは注目に値する。
中国はひたすら、EUのジョセップ・ボレル外相が「親ロシアだが中立」の外交姿勢を続けている。アメリカの元外交官は、中国と新たな対話を始めて報われるチャンスは25%ぐらいだろうと言う。だがそれ以外の策は対立を深めるものばかりだとすれば、中国が困っているという新たな戦略環境をチャンスに生かさないのは間違いだろう。
(翻訳:ガリレオほか)