バイデンは中露分断のチャンスをふいにした
Is Biden Missing a Chance to Engage China?
米国家情報長官室は2019年、中国とロシアは「1950年代半ば以降、どの時点より足並みがそろっている」としたうえで、こう述べている。「この関係は強化される可能性が高い。特に、両国が見るところの米国の覇権主義や介入主義、西側による民主主義的価値観や人権の推進について、両国の利害と脅威の認識の一部が一致しているためだ」
中ロ両国のそうした利害は今も一致している。とりわけ、アメリカの権力と影響力を削がなければならない、というのは共通認識だ。
一方、キッシンジャーやロードをはじめとする中国専門家は、気候変動、COVID-19、北朝鮮の核ミサイル拡散などの重要課題に不可欠な米中の協力関係が弱まっているのはまずいと指摘する。中国が、これらの大義に向けて協力する条件として、米国側の対立姿勢の緩和や関税の軽減を要求しているためだ。
半世紀前に国交正常化を成したときの米国と中国は、政治体制や民主主義などの基本的な問題について、意見の相違がありながらも合意を形成することができたと、専門家は指摘する。
なぜ追加関税を撤廃しないのか
いま中国政府関係者は非公式な会話で、バイデンが中国との対立姿勢を崩さないことへの困惑を示している。中国政府関係者によれば、ウクライナは完全な主権国だが、台湾は中国の一部であることは米国も認めているという。バイデンは5月23日、中国が台湾に侵攻すれば軍事介入すると言ったが、米国が50年前に「一つの中国」政策を受け入れ、これがウクライナと台湾の立場を区別するものになっていることも再確認している。
一部の中国専門家は、バイデンは前任者のドナルド・トランプが中国に科した制裁関税の一部を解除できるはずだと指摘する(バイデン政権の関係者でさえ、追加関税はインフレに苦しむ米国民にさらなる負担を強いているし、中国の保護主義的な貿易慣行の是正にも役立たなかったと認めている)。ある政府高官は5月に入ってから、「追加関税の多くには、戦略的根拠がない」と認めた。
米商務省の次官だったウィリアム・ラインシュは、「トランプの政策は明らかに失敗だ」と断言した。「そして明らかに、ウクライナは世界のダイナミクスを変えている」
しかし、バイデン政権はこの数カ月、中国に対するアプローチを大きく変えていず、むしろ好戦的な姿勢を強めている。バイデンは何度か習とバーチャル首脳会談を行い、国家安全保障問題担当補佐官のジェイク・サリバンも5月に入って中国の外交トップの楊潔チと会談したにもかかわらずだ。