バイデンは中露分断のチャンスをふいにした
Is Biden Missing a Chance to Engage China?
バイデン政権は中国に対し、「ロシアのように弱くて無能で、各国の主権や領土保全を平気で踏み躙るパートナーと組んでいると、高い代償を払うことになると指摘」するべきだとロードは主張する。「長期的には、中国とロシアのパートナーシップは弱体化していくと考えている。経済力があまりに違うし、歴史的・人種的な問題や国境をめぐる問題での対立が数多くあるし、(中国にとっては)アメリカ、ヨーロッパやアジアの民主主義諸国との間の経済的利害関係の方が、はるかに大きい」
習と中国指導部の本音は不明だが、中国当局者の一部がロシアとの関係を疑問視している可能性をほのめかす材料は幾つかある。中国のニュースサイト「鳳凰新聞」によれば、かつて駐ウクライナ中国大使を務めた高玉生が、5月に入ってから中国社会科学院が主催した非公開のイベントの中で、ロシアは失敗に向かっていると指摘。ウクライナにおけるロシア軍の苦戦ぶりは、「プーチンが率いるロシアの復興または再生と呼ばれるものが、そもそも存在しないこと」を示していると述べた。
避けたい「2つの冷戦」
彼はさらに、「いわゆる軍事超大国としての地位とは不釣り合いなロシア軍の経済力では、ハイテク戦争を支えることは難しい。ロシア軍が、その経済的苦境が原因で敗北することは明白だ」と発言した。そしてわずか数時間後には同サイトから削除された。
問題は、中国との関係を再調整するために、バイデン政権として今何ができるかということだ。米中国交回復の立役者で現在92歳のキッシンジャーも、5月に英フィナンシャル・タイムズ紙がワシントンで開催したフォーラムの中で、中国とロシアの間に「(かつてと違い)我々が意図的に意見の対立をつくり出すことはできないと思う」と述べた。そしてこうもつけ加えた。「(アメリカと)敵対する2つの国を団結させるような方法で、彼らに敵対的な立場を取るのは賢明ではない」
2022年に入り、プーチンがウクライナ侵攻の準備を進めていたとき、一部の専門家は米国が中国およびロシアと同時に長期的な対立に陥るかもしれないと警告した。米国のシンクタンク、ランド研究所は2021年、中ロ関係に関する重要な研究報告のなかで、「1つではなく、2つの冷戦」が起きるかもしれないと結論づけている。
中国とロシアは最近まで、「世界における米国の覇権」に対抗する共同戦線をつくろうとし、中国は武器の大部分をロシアから購入してきた。また中ロ両国は、バイデンがウクライナ紛争を独裁体制への対抗軸として世界の民主主義国を糾合しようとしていることに怒りをあらわにしている。