バイデンは中露分断のチャンスをふいにした
Is Biden Missing a Chance to Engage China?
5月24日には、バイデンはクアッド(日米豪印戦略対話)の首脳会合に出席。インド太平洋地域で影響力の拡大を狙う中国を孤立させ、また中国に対抗するための協議だ。
バイデンの今回の東アジア歴訪は、アメリカがヨーロッパだけでなくアジアにも多くの同盟国を持っていることを示し、プーチンがウクライナで試みていることを、中国が台湾に対して行うのを抑止することが狙いだ。バイデンは23日に東京で行った会見の中で、記者団からの質問に対して、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて台湾を守る決意が「ますます強くなった」と発言。
中国が台湾に軍事攻撃を行った場合には、台湾を守るために軍事介入するつもりだと述べた。アメリカの台湾防衛に関する方針は意図的に「あいまい」にされているが、そこからすると大きく踏み込んだ発言だ。
中国外務省の汪文斌副報道局長は、このバイデン発言について、中国政府として「断固反対」の立場を表明。「台湾の問題は中国の内政問題であり、いかなる外部勢力の干渉も許さない」と強調した。
対中強硬一辺倒に疑問
中国に対するこうした強硬なメッセージは、バイデンの大統領就任時から変わらない基本的なやり方だ。しかし一部のストラテジストは、中国に対して新たなアプローチを取る機会が訪れつつあるのではないかと考えている。形勢を傍観するしかない中国がそのメンツを保ったまま、ウクライナでのロシアの最悪な混乱ぶりからさらに距離を置くチャンスを与えることができるのではないかというのだ。
中国が近い将来、劇的な方針転換を行う可能性は低いし、それが実現可能だとも思えない。バイデンと習近平がいずれも、国内で米中対立を政治的に利用していることを考えればなおさらだ。バイデンは11月に中間選挙を控えており、連邦議会と良好な関係を維持するためには、対中タカ派の数多くの議員の支持を得る必要がある。一方の習も、秋の第20回共産党大会で3期目続投を確実なものにするためには、アメリカに対して弱腰の姿勢は見せられない。
アメリカの対中政策に詳しい元米外交官(匿名)は、「米中双方にとって今こそ、方針転換を行うべきかどうかを詳しく探るべき時」だと指摘した。「それによって両者が国内で払う犠牲は大きいが、潜在的な利益もとてつもなく大きい」
ヘンリー・キッシンジャー米国務長官が米中国交正常化の道を開いた約50年前に国務次官補を務めたウィンストン・ロードは、習近平が「専制君主仲間(のプーチン)に今も親近感を抱いている」ことは間違いないと指摘。だが一方で、ロシアがウクライナ侵攻を開始する数週間前に、プーチンと習が首脳会談を行って「限りのない」戦略的パートナーシップを宣言した時から、状況は劇的に変化しているとも述べた。