中国の魔の手から「欧州の中心」を救え
U.S., EU Risk Losing 'Heart of Europe' to China, Montenegro Warns
ロシアもバルカン諸国への影響力争いに参加している。ロシア政府は長い間、この地域が西側の手に落ちないように努力しており、この地域の親欧米派政権の不安定化を図るため、サイバー戦争などを含むハイブリッド攻撃を仕掛けて非難されてきた。
たとえば2016年、モンテネグロ当局は、野党政治家とロシアの情報機関が国政議会選挙と同じタイミングでクーデターを計画していたことを発表した。このクーデターは失敗し、同国の親NATO派が勢いづいた。その翌年、一部の野党議員が投票をボイコットするなか、議会は46対0でNATOへの参加を決めた。
「ロシアとの関係を見れば、2014年のウクライナ危機の勃発以来、対ロ関係は損なわれていると言わざるをえない」と、ラドゥロビッチは言う。
モンテネグロは抑止と対話のバランスを取らなければならない、と彼は主張した。現在の脅威は過去に比べて存亡に関わるものではないが、なくなったわけではないからだ。
「1940~50年代以降、状況は変わった。私はモンテネグロのハードパワー(軍事力・経済力)への挑戦を軽視するつもりはない。だがハードパワーによる挑戦が最も重要だった時代はすでに終わった。脅威はハイテク戦争やサイバー攻撃を含めたハイブリッド戦争に移行した」と、彼は指摘する。
「西バルカン諸国は、超大国と第三国にとって常に魅力的な標的だった。ここ西バルカン諸国、特にモンテネグロで、私たちはこのようなハイブリッド攻撃の脅威を経験してきた」
民族の危ういバランス
NATO幹部らは11月下旬、ラトビアで次回の同盟国閣僚会合に参加する。モンテネグロは、イエンス・ストルテンベルグNATO事務総長に対し、西バルカン諸国に焦点を当てるように要請した
「NATOの結束を強めるには、弱点である西バルカン諸国の問題を解決する必要がある」と、ラドゥロビッチは言う。
モンテネグロおよび西バルカン諸国はさらに、かつてこの地域に大量虐殺と荒廃をもたらした民族紛争が再熱しないように、危ういバランスを取らなくてはならない。
この地域の北東に位置するセルビア共和国は、ロシア政府と緊密な関係にある。そしてセルビアは地域全体のセルビア人コミュニティを支援し、影響力を強化している。
北西部にはボスニア・ヘルツェゴビナがあり、国内少数派であるセルビア人指導者による分離独立の潜在的な危機を抱えている。東にはセルビアから独立したが、セルビアに承認されていないコソボがあり、国内のセルビア人住民の不穏な動きと、セルビアとの国境地帯の緊張に苦しんでいる。
この地域は1990年代に大量の犠牲者を出した民族紛争で傷を負い、世代間で引き継がれるトラウマと疑惑が、地域の和解と進歩を妨げている。例えばボスニアにおいては、ラドゥロビッチは「過去25年かけても解決されていない問題が表面化している」と述べた。