最新記事

石油

インドネシア、中国・イランのタンカー摘発 経済制裁逃れの石油「瀬取り」か

2021年5月27日(木)19時56分
大塚智彦
インドネシア側に拿捕された中国とイランのタンカー

インドネシア側に拿捕された中国とイランのタンカー KOMPSTV / YouTube

<詳細が明かされないのはインドネシアの中国への「忖度」との声も>

インドネシアの裁判所は5月25日、"瀬取り"をしていたとされる石油タンカー2隻の中国人船長とイラン人船長2人に対して「海上に不法に燃料を放棄した」「インドネシア領海に不法に侵入した」として執行猶予付きの禁固1年の有罪判決を下したことを明らかにした。

地元メディアなどによると、パナマ船籍のタンカー「MTフレア」の中国人船長ヨー・クン被告とイラン船籍のタンカー「MTホース」のイラン人船長メディ・モンハセムジャロミ被告は、1月にインドネシア領海への不法侵入と積み荷の石油の海上不法投棄などで摘発、起訴されていた。スマトラ島北部のリアウ諸島州バタムの地方裁判所で4月から公判が続けられた結果、25日に判決が言い渡された。なお両船の乗組員は全員訴追を免れている。

判決の中でバタム地裁の裁判長は「今後2年間、同様の罪を犯さないことを条件に2被告に禁固刑の執行を猶予する」との判決を2被告に言い渡した。

ただ中国人船長のヨー・クン被告に対しては、「瀬取り」を摘発された際に証拠隠滅を図る目的で積み荷の石油を海上に不法投棄したことは有罪とされ、罰金20億ルピア(約14万ドル)の罰金支払いを命じた。

報道によると両被告の弁護士は「判決を受け入れて控訴しない」との方針を明らかにしており、判決は確定するものとみられている。

イラン、制裁逃れで中国へ石油輸出か

1月24日、インドネシア領カリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)西カリマンタン州沖合のインドネシア領海内で航行する2隻の不審な石油タンカーを日本の海上保安庁に相当する「海上保安機構(BAKAMLA)」が発見した。

両タンカーは海上での船舶の識別符号や船舶の種類、位置や針路、速力などの航行状態などを自動的に船舶同士や陸上局と情報交換するシステム「自動船舶識別装置(AIS)」をオフにしていたことからBAKAMLAが不審船と判断して拿捕したという。

拿捕の際、2隻のタンカーは舷側を並べるように接しており、パナマ船籍の船からは大量の石油が海上の投棄されていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

海底ケーブル破損、スウェーデンが中国船に調査協力を

ビジネス

トランプ関税表明、政策や空威張りは予想通り トレー

ビジネス

ECBは利下げ継続へ、重点を成長に移している=副総

ビジネス

日産の格付け見通しを「弱含み」に変更、従来「安定的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 9
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 10
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中