最新記事

アジア人差別

アトランタ銃撃、容疑者が性依存症でも動機がアジア人差別でなかったことにはならない

Atlanta Attack Exposes Dangerous Sexualization of Asian Women

2021年3月19日(金)16時33分
スー・キム
シアトルのチャイナタウン アジア系への暴力に反対するデモ

3月14日、ワシントン州シアトルのチャイナタウンでアジア人への暴力を止めるよう訴える人々 Lindsey Wasson-REUTERS

<モノのように扱われたり空想は異常な性愛の対象にするのも、アジア人差別と同じことだ>

3月16日に米ジョージア州で発生した銃撃事件では8人が死亡し、このうち6人がアジア系の女性だった。アジア系に対する暴力が吹き荒れるなかの新たな犯行に、全米のアジア系コミュニティーは震え上がった。

事件の現場となったのは、アトランタ周辺にある3軒のマッサージ店。警察は一連の銃撃事件に関連して、ロバート・アーロン・ロング容疑者(21)を逮捕した。犠牲者の半数以上がアジア系の女性だったことから、アジア系住民が標的にされたのではないかという懸念が浮上した。

webw210318-atlanta02.jpg

詳しくはまだ調査中だが、警察が17日に明らかにしたところによれば、ロングはセックス依存症に悩んでおり、誘惑を断ち切りたかったと話しているそうだ。チェロキー郡保安官事務所のジェイ・ベイカー警部は会見で、次のように述べていた。「まだ断定するのは早いが、容疑者は人種が動機ではないと主張している」

しかし専門家やアジア系コミュニティーは、性依存症だろうと、アジア系女性を「フェティシズム(異常な性愛)の対象」にすることはアジア系に対する人種差別に他ならないと主張する。

アジア系女性は「狙われやすい」

当局の発表で、一部の人々は犯行は人種差別ではなく、セックス依存症と怒りに駆り立てられた犯行だと考えるようになった。加害者がこれらの施設を襲ったのは、彼が頻繁に利用していたマッサージ店に対する強い怒りが原因であり、たまたまそこの従業員がアジア系の女性たちだった、というわけだ。

だが、在米韓国人委員会のエイブラハム・キム事務局長は本誌に対してこう語る。「この男のセックス依存症と憎悪は、必ずしも人種と無関係ではない。今回の攻撃は、アジア系女性をモノとして見たり、定型化されたイメージに当てはめたりする傾向、つまり人種差別的な側面がある」

ほかにも複数のアジア系米国人コミュニティー関係者が、人種差別とアジア系女性をモノとして・性的な対象として見る傾向には関連があると声を上げている。

アジア系米国人や太平洋諸島出身者を標的とした犯罪について追跡調査を行っている非営利団体「Stop APPI Hate」の創設メンバーであるラッセル・ジョン博士は、ミネソタ州の地元テレビ局KARE11に対して、次のように述べた。「(女性が)フェティシズムの対象やモノとして見られているのは明らかだ。女性は男性に比べて2.3倍も攻撃されやすい。アジア系の女性は、そのほかの女性の2倍、標的にされていると思う」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

SHEINのロンドン上場、英国が認可 中国の承認待

ビジネス

午後3時のドルは一時142円台、半年ぶり安値 米関

ワールド

米特使がモスクワ訪問、プーチン氏と会談へ=アクシオ

ビジネス

アングル:鯨幕相場に潜む「もう1頭のクジラ」、国内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 9
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中