最新記事

バイデン 2つの選択

バイデン政権はブルーカラーを失望させたオバマの過ちから学べるか

LEARNING FROM OBAMA’S FAILURES

2021年2月4日(木)18時30分
デービッド・シロタ(ジャーナリスト)

しかし、これは自己矛盾だ。民主党は上下両院を制したといっても、議会内で共和党と勢力が拮抗している。対立を避けていれば、大規模な公的投資は不可能だ。大胆な政策課題を実現するには、共和党相手に丁々発止の論陣を張るしかない。

これまで何年も政府の大盤振る舞いを支持してきた共和党がここにきて突然、財政赤字を気にするふりをし始めた。彼らはバイデンが公約に掲げた環境と労働に関する法改正を全力で阻止しようとするだろう。

バイデンと共和党の接近を恐れる左派の懸念は的を射ている。彼は過去にも人種差別撤廃に向けた「強制バス通学」に反対する差別主義者に協力し、イラク戦争を支持し、社会保障の削減を推進するなど共和党と手を組んできた。特に社会保障をめぐっては、共和党上院を率いるミッチ・マコネル院内総務と共通項を見いだすシナリオが容易に想像できる。

となると、急進派はオバマ時代の教訓から学ぶ必要がある。大統領の意向を尊重するオバマ政権1期目の対応を繰り返すのではなく、共和党への妥協を拒み、対立を辞さない姿勢を示すようバイデンに圧力をかけ、オバマ政権発足直後の数カ月間の出来事を反面教師とするよう働き掛けるべきだ。

急進派の躍進を支える好条件

実際、そうした試みは既に一部成功している。急進派は1人2000ドルの現金給付案をバイデンに認めさせたのだ。

「上院は50対50、下院も僅差のリードしかないが、インフラ投資の法案から2000ドルの給付までやるべきことは山積みだ」と、民主党下院議員で、リベラル派議員が集まる「プログレッシブ議員連盟(CPC)」共同会長のマーク・ポーカンは言う。「オバマ政権1期目の轍を踏むことなく、共和党に接近し過ぎないよう気を付けながら、僅差のリードを生かして迅速に事を進めるべきだ」

そのためには、左派に足りないとされてきた抜け目なさと統制、そして胆力が求められる。草の根団体は新政権に圧力をかけることに慣れる必要があるし、民主党議員はバイデンに甘い言葉を掛けられても真正面からぶつかる覚悟を持つべきだ。

明るいニュースもある。急進派は現在、長年の歴史の中でも非常にいい立ち位置にある。党内の企業寄り勢力は財界との結び付きという点では相変わらず強大だが、世論調査によればその理念は支持されていない。多くの米国民が大きな変化を今すぐ望んでおり、急進派議員らは草の根の資金集め運動、政治基盤の改善、知名度の高い指導者といった要素に恵まれている。

下院には、CPCに参加している議員が100人近くいる。アレクサンドリア・オカシオコルテスをはじめ非白人系の女性下院議員グループ「スクワッド」も、CPCで中心的な役割を果たしている。

CPCは共和党と僅差の議会で影響力を高められるよう、より結束した投票行動を行うために規定改定を進めている。また、グリーン・ニューディール政策や国民皆保険などの法案を成立させやすくするために、予算規定を変えるよう民主党上層部を説得した。行政府が決めた規制を廃止できる議会審査法を発動させ、トランプが退任直前に定めた、労働者保護や温暖化対策に逆行する政策を取り消すよう働き掛けてもいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中