バイデン政権はブルーカラーを失望させたオバマの過ちから学べるか
LEARNING FROM OBAMA’S FAILURES
オバマ政権を支えたバイデンは共和党への融和路線も踏襲するのか(2008年) JOE RAEDLE/GETTY IMAGES
<融和路線で共和党に譲歩し過ぎれば大胆な改革は実らず、失望感が広がり、「第2のトランプ」が必ず登場する>
(本誌「バイデン 2つの選択」特集より)
ジョー・バイデンが「希望と変化」を掲げる政権の副大統領に就任したのは12年前のこと。当時と同様、晴れの舞台で宣誓し新大統領となった今、「希望」はほぼ死語と化し、当時以上に「変化」が求められている。
社会を変容させるような大胆な改革を求める人たちは、その要求を実現できるめったにない機会を得た。だが過去にそうだったように彼らはまたもや挫折を味わうかもしれない。
なぜか。バイデンが矛盾するメッセージを発信し続けているからだ。
今ほど失敗が許されない状況はまずない。既にアメリカ人の800人に1人が新型コロナウイルス感染症で亡くなっているが、感染拡大は一向に収まらない。株価を見ると米経済は好調のようだが、立ち退きや破産、飢えに直面している困窮者は数知れない。退任を控えた大統領が暴動をけしかける前代未聞の事態が起き、アメリカの民主主義はかつてない危機に見舞われている。
今や価値観の対立と政治的な対立、現実のものとなった内戦の危機が濃霧のように立ち込め、前途は見通せない。確実に言えるのはバイデンが岐路に立っていること。どちらに向かうか本人も決めかねているようだ。
かつての上司バラク・オバマのように財界の要望に応じつつ、超党派の合意づくりと譲り合いを追求するか。あるいは寡占企業と戦い、ファシズムを打ち負かし、富裕層を敵に回す政策もいとわなかったフランクリン・ルーズベルトの道をたどるか。
両方は選べない。オバマ政権の教訓は、融和路線を取りつつ、大胆な改革を推進することは不可能だ、ということである。
オバマは「大胆な富の再分配を目指す外国生まれの社会主義者」という虚偽のレッテルを貼られつつ、2008年の大統領選で勝利し、今と同様、社会が分断され景気が冷え込んだ状況で国の舵取りをすることになった。当時のアメリカはイラク戦争がもたらした心的外傷に苦しみ、金融危機で経済はガタガタだった。
オバマはいわばルーズベルトと同じような状況で大統領に就任したのだ。だが彼はその機会を資本と労働の力関係を是正する「新たな契約」、つまりニューディールのために利用するのではなく、ただ現状を維持しようとした。
例えばオバマは前任者の銀行救済措置を引き継いだ。後にそれを打ち切ったのは、困窮する住宅所有者を救済するためではなく、財政赤字の削減のためだった。景気刺激策を推進したが、規模が小さ過ぎたため景気回復には恐ろしく時間がかかった。
目玉政策である医療保険制度改革も、共和党がまとめた案に多少リベラル色を付けた程度。共和党との全面対決を覚悟で「メディケア・フォー・オール」、つまり国民皆保険を実現しようとはしなかった。