バイデン政権はブルーカラーを失望させたオバマの過ちから学べるか
LEARNING FROM OBAMA’S FAILURES
ウォール街には厳しい措置を取ると言いつつ、金融危機を招いた銀行幹部の法的責任を問おうとはしなかったし、金融機関に不良債権処理を強いることも、最大手の金融機関を分割することも拒んだ。
さらには「過去にとらわれず、未来に進むべきだという信念」から、前政権がイラク侵攻を正当化するために虚偽情報を流した疑惑や、テロ容疑者に拷問を加えた疑惑に事実上、ふたをしてしまった。
民主党に失望したブルーカラー
それでもリベラル派のオバマ愛は冷めなかった。民主党左派の議員はオバマ政権に自分たちの政策課題を踏みつぶされても、自党の政権を批判することにはためらいがあり、異議を唱えなかった。
共和党との融和路線を取り続けたオバマは、その努力が友情で報いられると期待していたのかもしれない。だが、いかんせん共和党議員がオバマの推す法案に賛成票を投じることはまれで、オバマを褒めることはさらにまれだった。しかも中間選挙で民主党は大敗。大胆な改革が実現する望みは完全に断たれた。
オバマが現状維持に徹し、金融危機で住宅価格が暴落してもウォール街の責任を問わなかったため、ローンを抱えて生活苦にあえぐ人々は民主党政権に失望。リベラルに裏切られた反動で多くの有権者がドナルド・トランプに望みを託した。
「民主党が労働者の党であり続けていたら、トランプが大統領になることはなかっただろう」と、カリフォルニア大学アーバイン校の政治学者、バーナード・グロフマン教授は最近メディアに語っている。「(オバマの)住宅危機への対処は、家を失った庶民ではなく、住宅ローン金融と関連する金融機関を救済するものだった。中間層と低所得層の賃金と所得が一向に上昇しない状況は、オバマ政権下でも続いた」
バイデンがオバマ政権の教訓に学ぶかは不明だ。彼は長年、予算削減を唱える財政タカ派だったが、ある時期からそれを捨てた。年金制度の拡充を訴え、コロナ禍であえぐ家計を支援するため2000ドルの現金給付案も認め、最近では「財政赤字が拡大しても、政府が巨額の投資を行い、経済成長を後押しする」とまで言いだした。
一方で、それと正反対のこともやっている。当初は民主党に、現金給付なしの景気対策案を認めさせようとした。さらにトランプ支持者らが連邦議会に乱入した事件で共和党が大打撃を受けた8日後、共和党に救いの手を差し伸べ、(法案成立には共和党の合意は不要なのに)政権発足後に最初に打ち出す景気対策に共和党の要求も盛り込む意向を示した。
バイデンには共和党に気を使って大胆な改革案を引っ込める一面がある。彼は以前トランプが去れば、共和党は民主党と協調すると希望的観測を述べていた。トランプ政権の権力乱用の数々を調査する気はないと語ったとも伝えられ、「私たちは共和党を必要としている」と主張。共和党議員に「公の場で恥をかかせるようなことはしない」とまで誓った。