コロナ治療にステロイドが有効、重症患者向け(WHO)
WHO Recommends Steroid Treatment for Severe COVID Cases
重症患者の治療薬として副腎皮質ステロイドに期待がかかる Bill Oxford/iStock
<重症患者では死亡リスクが30%減少したが、中等症患者ではむしろ悪化すると警告>
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の重症患者にステロイド薬を使用することで、死亡率が下がることが複数の臨床試験で示され、世界保健機関(WHO)は治療ガイダンス(治療に関する提言)を更新した。
新型コロナウイルスに感染して入院した患者に対して、副腎皮質ステロイドを使用した場合と、標準的な治療またはプラセボ(偽薬)を使用した場合の効果を比較した複数の臨床試験結果を分析したところ、大きな違いが認められた。副腎皮質ステロイドは安価で手に入りやすく、抗炎症作用があり、COVID-19の危険な合併症に効果が期待できる。
WHOが行ったこの分析の結果は、9月2日発行の米国医師会報(JAMA)に掲載された。それによれば、同ステロイド薬を使用した治療を受けた患者678人の約33%が、28日間の観察期間中に死亡。標準的な治療またはプラセボ治療を受けた患者1025人については、約41%が同期間中に死亡した。さらに複数の研究結果を統合して解析を行った結果、副腎皮質ステロイドを使用した治療の場合、患者が死亡する絶対リスクが約30%減少することが示された。
貴重なリソースの無駄遣いを警告
WHOは最新の治療ガイダンスの中で、「有識者パネルとしては、死亡リスクが大幅に減少することを示す(中程度の確実性)エビデンスを考慮に入れると、十分な情報を与えられたCOVID-19の重症患者は、副腎皮質ステロイドを使用した治療を選ぶだろうという結論に達した」と述べている。ガイダンスは、専門家や患者、臨床医や方法論学者たちが臨床試験のデータを検証した上で更新された。
ガイダンスは副腎皮質ステロイドの使用について、COVID-19の重症患者には効果があるようだとする一方で、非重症患者には同じ効果はないようだと強調。中等症の患者にステロイド薬を使用した場合、かえって悪影響となる可能性があるとしている。
「有識者パネルは、十分な情報を与えられた非重症患者は、副腎皮質ステロイド薬による治療を選ばないだろうという結論に達した。現在のデータは、非重症患者についてはこの治療の効果が見込めず、かえって害になる可能性があることを示しているからだ」とWHOはガイダンスで説明。医療従事者は、リソース(在庫)がなくなるのを避けるべく、ステロイド薬の投与は慎重に行うべきだとつけ加えた。
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