最新記事

感染症対策

コロナ治療にステロイドが有効、重症患者向け(WHO)

WHO Recommends Steroid Treatment for Severe COVID Cases

2020年9月3日(木)15時55分
エミリー・チャコール

重症患者の治療薬として副腎皮質ステロイドに期待がかかる Bill Oxford/iStock

<重症患者では死亡リスクが30%減少したが、中等症患者ではむしろ悪化すると警告>

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の重症患者にステロイド薬を使用することで、死亡率が下がることが複数の臨床試験で示され、世界保健機関(WHO)は治療ガイダンス(治療に関する提言)を更新した。

新型コロナウイルスに感染して入院した患者に対して、副腎皮質ステロイドを使用した場合と、標準的な治療またはプラセボ(偽薬)を使用した場合の効果を比較した複数の臨床試験結果を分析したところ、大きな違いが認められた。副腎皮質ステロイドは安価で手に入りやすく、抗炎症作用があり、COVID-19の危険な合併症に効果が期待できる。

WHOが行ったこの分析の結果は、9月2日発行の米国医師会報(JAMA)に掲載された。それによれば、同ステロイド薬を使用した治療を受けた患者678人の約33%が、28日間の観察期間中に死亡。標準的な治療またはプラセボ治療を受けた患者1025人については、約41%が同期間中に死亡した。さらに複数の研究結果を統合して解析を行った結果、副腎皮質ステロイドを使用した治療の場合、患者が死亡する絶対リスクが約30%減少することが示された。

貴重なリソースの無駄遣いを警告

WHOは最新の治療ガイダンスの中で、「有識者パネルとしては、死亡リスクが大幅に減少することを示す(中程度の確実性)エビデンスを考慮に入れると、十分な情報を与えられたCOVID-19の重症患者は、副腎皮質ステロイドを使用した治療を選ぶだろうという結論に達した」と述べている。ガイダンスは、専門家や患者、臨床医や方法論学者たちが臨床試験のデータを検証した上で更新された。

ガイダンスは副腎皮質ステロイドの使用について、COVID-19の重症患者には効果があるようだとする一方で、非重症患者には同じ効果はないようだと強調。中等症の患者にステロイド薬を使用した場合、かえって悪影響となる可能性があるとしている。

「有識者パネルは、十分な情報を与えられた非重症患者は、副腎皮質ステロイド薬による治療を選ばないだろうという結論に達した。現在のデータは、非重症患者についてはこの治療の効果が見込めず、かえって害になる可能性があることを示しているからだ」とWHOはガイダンスで説明。医療従事者は、リソース(在庫)がなくなるのを避けるべく、ステロイド薬の投与は慎重に行うべきだとつけ加えた。

<参考記事>キューバが「奇跡の新薬」と医師ら400人を世界に派遣、新型肺炎治療を支援
<参考記事>新型コロナ感染症と戦って勝つ免疫細胞を発見

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    筋肉の「強さ」は分解から始まる...自重トレーニング…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中