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ロシアナワリヌイ入院が明るみにしたロシア野党の指導者不足
ロシアの反体制派アレクセイ・ナワリヌイ氏(写真)が突然意識不明となり治療を受けていることで、9月の統一地方選でプーチン大統領の権力構造に風穴を開けようという同氏の戦略には狂いが生じた。モスクワで2月撮影(2020年 ロイター/Shamil Zhumatov)
ロシアの反体制派アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が突然意識不明となり治療を受けていることで、9月の統一地方選でプーチン大統領の権力構造に風穴を開けようという同氏の戦略には狂いが生じた。ただ同時に浮かび上がってきたのは、ロシア野党勢力に他に有力指導者が存在しないという、より長期的な問題だ。
毒物を盛られた疑いのあるナワリヌイ氏は現在ベルリンの病院に入院中。それまでは統一地方選に向けて、支持者らに政権与党「統一ロシア」に反対する候補を選んで投票するよう呼び掛けを続けていた。
9月半ばに予定される統一地方選は、18の州知事や各レベルの地方議会選挙が行われ、来年9月の連邦下院選の事実上の予行演習と位置づけられている。
一見すると4期目に入ったプーチン氏が率いる政権は難攻不落に思われる。だが国民の間では多年の賃金低下や新型コロナウイルス対策のロックダウン(封鎖)に不満がうっ積。同氏の支持率が20年ぶりの水準に落ち込んでいる中で地方選を迎える。
ナワリヌイ氏は、20日にシベリアからモスクワに向かう飛行機の中で突然意識を失うまで、選挙キャンペーンを現在の政治システムを切り崩す長期的な戦略と位置付けていた。
その戦略とは、同氏の連携勢力がしばしば立候補を禁じられる一方で、その他の野党からのよりおとなしい候補には出馬が認められる点を利用する作戦だ。
ナワリヌイ氏が「スマート投票計画」と名付けたこの作戦では、支持者は統一ロシアへの対立候補で投票すべき先の名前を選挙前日に電子メールで受け取る。昨年のモスクワ市議会選では見事に功を奏し、統一ロシアの議席を3割強も減らして動揺を誘うことができた。
モスクワ以外では作戦は不発に終わったとはいえ、極東ハバロフスクでは大規模な反政権デモにつながった。18年の選挙で、反統一ロシア候補として異例の当選を果たした州知事が過去の殺人に関与した容疑で突然拘束・解任されたことに反発する人々の動きだった。
ナワリヌイ氏陣営で同氏の盟友のレオニド・ボルコフ氏は、陣営としてスマート投票作戦を今後も推進していくと表明。ロイターに対して「ナワリヌイ氏が運動から一時的に離脱したのはわれわれにとって極めて好ましくないのは明らかだ」と認めながらも、ナワリヌイ氏の不在を埋めるため取り得るあらゆる措置を講じて、スマート投票を通じた選挙勝利を目指すと誓っている。
しかし、かつて政権向けの演説原稿作成者だった政治アナリストのアバス・ガリヤモフ氏は、こうした運動をナワリヌイ氏の代わりに展開できるほど政治的影響力のある人物が果たしているのかと疑問を呈し、「有権者に対して一斉に同じ行動をするよう仕向けるには、とてつもなくカリスマな政治家が求められる」と話す。
難儀な仕事
ではナワリヌイ氏が何カ月も、あるいは永遠に戦列を離れてしまった場合、ばらばらな野党内で一体誰が指導者に名乗り出られるのだろうか。
2011年のデモをきっかけに頭角を現したナワリヌイ氏が、現時点で野党勢力の指導者であることに議論の余地はない。
同氏が「ユーチューブ」で当局者の汚職問題を詳しく伝えた動画は、数百万人の国民が視聴し、同氏をプーチン政権にとって目の上のこぶ的な存在にした。
ただ政権に近いある関係者は、スマート投票が政府を悩ましてきたのは確かだとしつつ、重大な脅威かと言えばそうでもないと指摘。野党側はより大きな問題、つまり人材の空白に直面していると付け加えた。
「ナワリヌイ氏は聡明で若く、ハンサムかつ知名度もあり、独自の政治スタイルを確立している。同じような人物がこの先登場してくるのか。すぐには無理だろう」という。
これに対してボルコフ氏は、スマート投票作戦はナワリヌイ氏個人と結びついているわけではないと反論した。ナワリヌイ氏陣営にはボルコフ氏のほか、32歳の弁護士でモスクワの昨年のデモで一躍名を知られるようになったリュボフ・ソボル氏や、反体制活動家のイワン・ズダノフ氏、グレゴリー・アルブロフ氏などの顔ぶれがそろっている。
とはいえロシアの野党指導者は、人々がおいそれとなりたがる職業ではない。ナワリヌイ氏は、親プーチン派の活動家から何度も狙われている。16年には南部遊説中に襲撃され、17年も2度襲われ、このうち1度は何者かに緑色の液体をかけられて一時片方の視力を失った。また14年に同氏の兄弟が投獄されたのは、政治的な意図があったとの見方が多い。
それでも政権に近い前出の関係者は「この状況では野党側が新しい指導者を求めるのは難しい。しかし、誰かしら新しい人物は出てくるだろう。神聖な場所というのは、決して長い間空いたままにはならないものだ」と述べた。
(Tom Balmforth記者、Anton Zverev記者)
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