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米中関係

パンデミックをめぐる米中対立の舞台はWHOへ

China Backs WHO in War of Words with U.S.

2020年4月16日(木)16時40分
デービッド・ブレナン

トランプはWHOが中国寄りだと非難し、中国は激怒する  Denis Balibouse−REUTERS

<初動の遅れは米中もWHOも同罪なのだが、ウイルスの脅威に晒された人びとをよそに責任のなすり付け合い>

中国政府の「6日間の沈黙」が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を招いた──というAP通信の記事を、中国外交部は偏向報道だとして激しく非難した。

中国外交部の趙立堅報道官は、4月15日の定例会見でAP通信の記事を「不公正」だと断罪した。趙は、新型コロナウイルスは「米軍が武漢に持ち込んだ可能性がある」と3 月にツイートして、物議をかもした人物だ。

趙報道官は報道陣を前に、自分はその記事を読んでいないが、中国政府は世界保健機関(WHO)にただちに報告し、「遅滞なく」対策を取ったと言った。

AP通信によれば、中国政府が情報開示を怠っていた6日間に感染者は3000人を上回った。この6日間はちょうど春節を控えた時期だったため、膨大な数の中国人が国内外を移動し、さらに感染が広がったという。習近平(シー・チンピン)国家主席の指示で、国民に新型コロナウイルスの危険性が知らされたのは1月20日になってから。AP通信の報道は、独自に入手した内部文書に基づくもので、そこには過去に遡った感染データが含まれていた。

<参考記事>「世界は中国に感謝すべき!」中国が振りかざす謎の中国式論理

制圧を誇る中国

中国政府は、当初の情報隠しがパンデミックを招いたと内外から批判を浴び、弁明に躍起になってきた。だが感染拡大をほぼ抑え込めた今、自国の成功が模範になるとばかりに、医療用物資と人材の提供で、他国の支援に乗り出している。それでも、感染拡大の中心地となった武漢で、最初にこのウイルスについて警告を発した医師らの口を封じたことも、WHOへの報告が遅れたことも、なかったことにはできない。

米情報機関が3月にホワイトハウスに提出した報告書は、中国当局が感染者数と死者数を少なく見せかけた疑いを指摘している。

趙報道官は15日の会見で、ドナルド・トランプ米大統領がWHOへの資金拠出の停止を発表したことに触れ、パンデミックと闘うグローバルな取り組みを妨げることになると非難した。

トランプは「WHOの対応能力を弱め、国際協力の足を引っ張る」決定をした、と趙は述べた。趙によれば、中国は米政府の決定に「深刻な懸念」を抱いているが、「国際的な公衆衛生上の取り組みとグローバルな感染症対応で重要な役割を担うWHOを支援する姿勢に変わりはない」という。

コロナ危機をきっかけに米中の協力体制が生まれるとの期待感もあったが、実際には危機の最中で超大国同士が互いに責任をなすりつけ合う醜悪劇が繰り広げられただけだった。経済規模でアメリカの優位を脅かし、強大な影響力を持つに至った中国に、トランプはもはや敵意を隠そうともしない。

<参考記事>差別を生み出す恐怖との戦い方──トランプの「中国ウイルス」発言を読み解く

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