パンデミックをめぐる米中対立の舞台はWHOへ
China Backs WHO in War of Words with U.S.
トランプ大統領は当初、中国の危機対応を手放しで褒め、習主席との信頼関係を自画自賛していたが、その後一転してパンデミックの責任は中国にあると主張し始めた。これには中国も黙っていない。トランプは当初の認識の甘さをごまかすため、中国を悪玉に仕立てて批判をそらそうとしている、というのだ。
アメリカはWHOへの最大の資金拠出国だが、トランプは14日、資金拠出を60〜90日間停止し、その間に中国の情報隠しにWHOが関与した疑いについて検証すると発表した。トランプに言わせれば、WHOは中国で調査を行わず、中国が感染の広がりや危機の深刻さを隠蔽するのを容認したという。
15 日の記者会見では、WHOの資金不足を中国が補う考えはあるかとの質問も出た。これに対し、趙は「状況の必要性に応じて、関連した問題を検討する」と答えるにとどまった。
トランプはWHOが危機対応で「大失態を演じた」と断じているが、自分はどうなのか。WHOは1月30日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。その翌日、アレックス・アザー米厚生長官が公衆衛生上の緊急事態を宣言したが、トランプが国家非常事態を宣言したのはそれから1カ月半後の3月14日だ。
2月下旬の段階でも「アメリカでは(ウイルスは)ほぼ抑え込めている」とツイートしていたが、今ではアメリカは感染者数、死者数ともに世界最大だ。ジョンズ・ホプキンズ大学の集計では、14日時点で感染者数は60万人を突破し、死者数は2万5000人を上回っている。
自己正当化を図るトランプ
トランプは1月に中国からの渡航を部分的に制限した際に、WHOが懸念を表明したことを問題にし、「幸いにも私は、中国からの渡航を全面的に認めるべきだという彼らの当初の助言をはねつけた」とツイートした。「なぜ彼らはそんな間違った助言をしたのか」
当時WHOは、パンデミックの最中では国境封鎖などの措置は有効ではなく、重要な医療用物資の輸送を妨げる恐れがあると述べていた。
トランプは中国からの渡航を全面的に禁止したと主張しているが、これは事実ではないと、AP通信は指摘している。1月31日の措置は、過去14日間に中国を訪れた外国人の入国を一時的に制限しただけで、アメリカの市民権または永住権を持つ人の直系の親族は入国できた。
中国から帰国したアメリカ人については、帰国便を受け入れる空港を限定し、空港で健康検査を実施して、最長14日間の自宅待機を求めることになっていた。だが無症状の感染者が検疫をすり抜けた可能性もある。いずれにせよ、1月半ばの段階で、既にウイルスはアメリカに入り込み、もはや封じ込め不可能なほど、各地で感染が広がりつつあったとみられる。
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