ラオス初の新型コロナウイルス感染確認 ASEANすべてで感染報告、感染源は海外か?
国境制限、営業中止、集会禁止など対策していたが
ミャンマーを除く周辺国で感染拡大が続くなか、ラオス政府はこれまでに可能な限りの国内での感染発生、感染者の流入を阻止するために必要な措置を講じてきた。
一部ではミャンマーとラオスの医療水準や感染検査態勢の低さや不十分さを指摘して「感染者ゼロ」を疑問視する声も出ていたが、ラオス保健当局は「感染者ゼロ」を発表し続けてきた。
ラオスは人民革命党の一党支配による社会主義国家であり、すべての新聞は政府機関が発行し、またテレビ・ラジオは国営放送のため、報道の自由度は極めて低い。このためコロナウイルスに関する国民への情報の周知徹底、情報開示がどこまで実際に行われているかは外部から知ることは難しいとされる。
しかしラオス国内では初の感染者が確認される前の3月中旬から、政府主導でタイとの国境での出入国の制限、大規模な集会などの禁止、娯楽施設の閉鎖に加えて、4月21日までの全ての学校の休校措置などで感染の国内流入と感染拡大阻止の対策を講じていた。
外交的に関係の深い中国との海外定期航空便も停止。世界的観光地でもあるタイ、ミャンマーとメコン川を挟んで国境を接するゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯)周辺の道路を封鎖して立ち入り制限にも踏み切るなど対策を取っていた。
また多くのラオス人が海外出稼ぎ労働者として働くタイからの帰国者数千人に対する検疫も23日から本格的に開始するなどの取り組みも始めたばかりだった。
マスクの価格上限設定など対応
国民に対しては国民体育大会の延期を決めたほか、市場で品不足が伝えられているというマスクに関して政府が主導して価格の上限を決めて適正販売を促していた。
現地からの情報などによると、市場でのマスクの価格は三つ折り形式のマスクが1個2万5000キップ(約2.8ドル)、一つ折りマスクが1個1000キップ(約10セント)を上限価格として販売するように保健当局が各方面に指導しているという。
ラオス保健当局では2人の初の感染確認と同時に129人の感染が疑われる患者に対する検査を実施したことも明らかにしたが、検査の結果全員が陰性であったとしている。
初の感染が確認されたことで、ラオス国内では国民の感染予防に関する意識が一気に高まり、マスクや消毒用アルコール、さらに生活関連物資などの品不足や品切れが都市部を中心に今後起きる可能性もある。このため政府、保健当局によるさらなる感染拡大防止対策が急務となることは間違いない。
またASEANとしては、地球規模のパンデミックだけに東南アジア地域としてまとまった対応の必要性が求められていることに加え、ラオスでの感染者初確認で加盟国全てでの感染が確認されたこともあり、今後は加盟各国の保健担当閣僚などによる新たなコロナウイルス対策会議の開催が必要になってくることも予想されている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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